「えー欲しいもん?別にねえなー」
少し考えてからそういつものように笑って返す。誕生日が近い彼のために何かしてあげたいかったのに本人はこれだ、確かに彼は物欲がなさそうだ。
「ほんとに?いいの?好きなもの買ってあげるのに?」
「じゃあさ、家くれよ」
「は、経済的に無理でしょ冗談でもありえないよ」
「うそだっつーの、お前と将来2人で住む家なら俺が買うし」
にやりと笑ってそう言いきる彼に「け、結婚するなんて約束してない…!」と返すと「あれ、俺はするつもりまんまんだったのに」と狙っているのかよくわからない言葉を返してくるので心臓に悪い。
「そ、そんなんじゃなくて!真面目に!」
「そう言われてもねーもんはねーんだって、第一女の子からプレゼントはいっぱい貰うし」
「さいてー…」
高尾もてるもんなあとか内心納得しつつやはり自分の彼氏の口からそんなことを言われるとショックである。別に今言わなくてもいいじゃんか。
「はは、うけとんねーけどな!気持ちは大事にすっけどほんとにもらいたいのはお前だけからだし」
「もらうって言った…」
「気持ちは、な」
随分とずるがしこく回りくどい言い方である。第一私から貰うと言ったくせに欲しいものがないなんて矛盾している。
「俺は欲しいもんはないの、誕生日にお前が傍にいてくれりゃそれだけで満足ってわけ。だってさ好きな人と一緒に過ごせるってだけで特別な日になんだろ」
「…でも」
まだ何か言おうとする私にしびれをきらしたのか
「あーもーつまり誕生日プレゼントはお前で良いよってこと」
と言った。その言葉の意味ぐらい私にだってわかる。
「そ、そんなんでいいわけ?」
「そんなん?そんじゃあそのうえを行って結婚しますか。俺の名字あげる。あ、これじゃあ逆に俺があげちゃうのか」
ははと笑いながらいつものように言う彼に本気なのか冗談なのかよくわからない。
「結婚できる年齢じゃないよ…」
「あれ?てことは脈あり?俺が18歳になったらオッケー?」
しまった、と思ったけど口達者な彼に言いわけをしても無駄なんだろう。
「結婚もいいね」
と素直に口にすると何故か驚いた顔をされた。
「まじで……?」
「え!あれごめんい、嫌だよね!うん!」
「違う」
もしかして1人で勘違いしちゃってたのか恥ずかしいと思いながら謝ると先程より声のトーンが低くなった高尾君がこちらを見つめていた。
「俺は冗談で言ったわけじゃねーんだけど、名前がいいなら本気でとらえちゃうけど」
「……い、いい…よ」
なんとか声を絞り出してそう言うといつものような笑顔を向けて
「ぜったいだかんな」
と言った、頷くことしかできなかったけど充分嬉しかったわけででもこれじゃあ私が貰ってるんじゃないかと思うとどうにも納得がいかない。
「それじゃあ私が貰っちゃうんだけど」
「え?さっき言ったっしょ。お前でいいって」
どうやら彼は本気だったらしい。