「どーせあんたも顔だけなんスよね」

ひねくれている、性格が悪い。

一言でいえばそうだとおもう。
黄瀬涼太という男は顔が良ければ運動も頭もまあそこそこできるというやつで、女にとにかくもてる。私も惚れた1人なのだが人生で初めて異性に告白というものをしてみたらこれだ。人の一世一代の告白をこうも無残にできるものだろうか。
擦りよってくる数多くの女に女の真実というものを見てしまって疲れたのかもしれないが、とにかく私は告白したその直後に幻滅したのであった。




「ごめん。やっぱ好きじゃない」

「は?」

驚いたように目を見開く黄瀬君。どんな表情でもさまになるというか羨ましい。


「そういわれると冷めちゃったというか、どーせとか言ってほしくなかったし。なんて言うかそんな性格が悪いと思わなかったよ」

「……見た目だけで判断してもらっちゃこっちだって困るっス」

むっとしたように黄瀬君が言い返す、余計なこと言わずにさっさと退散すればよかった。

「うーんつまり私の中の黄瀬君像が高かったんだねーごめんねー」

「あんたなんかむかつくっスね」

「そーいうあんたは性格悪いですねー」

つい本音が漏れたけど黄瀬君の真実を知った今どうでもいい。


「迷惑なんスよ」

「ただのミーハーでしたゴメンナサーイ」

我ながら見事な棒読みだと思いつつ黄瀬君に背を向けて歩き出す。
もちろん黄瀬君がおいかけてくることなどなかったが告白なんてしなきゃよかったなと少しだけ心の中で後悔する。

全然好きじゃないよ黄瀬君









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「え、なにこれ表紙飾ってるだなんてしらないんですけど…!!」

幻滅したなんて思ってたのはどこへいったのやら黄瀬君が表紙を飾っている雑誌を見つけて思わず手に取る。


「性格悪くてもかっこいいなーちくしょー」

中身もぺらぺらめくってみるとばっちりポーズをきめてなんともかっこいいことか。
人間簡単には嫌いにはなれないものだと実感した。





「性格悪くて悪かったスね」

「え?」


ひとりごとにまさか反応が返ってくるだなんて思わなくて驚きつつ後ろを振り向くとご本人がいた。


「こ、こんにちは……」

「あんた好きじゃないって言ってなかったけ」

無難に挨拶をしておこうと思い挨拶をしたのにスルーして痛いとこをつついてくるあたりやはり性格が悪い。

「……黄瀬くん見てたんじゃないしー違うモデルの人見てたんです」

「表紙ずっと見てたっスよね?」

にこーっと私に向けてくれた初めての笑顔で尋ねられ「…ずっる……」なんて呟くと頬をつねられた。


「いた…っえ、ちょいたたたた!」

「力こめてるっスから」

「黄瀬君見てた!見てた!」

正直に言うとぱっと離れた、頬がじんじんする。


「…ほんと変な人っスねえ」

「……私、初恋だったし黄瀬君、まあそれは錯覚だったらしいけど」

本を持ってレジに向かおうとすると「それ買うんスか」と尋ねられた。


「買う、まさか買うななんて言わないよね買うのは人の自由だし」

「別にそこまでいわねーっス、あんた名前なんていうんスか?」

「ミーハー」

「…ふざけてるんスか?」

また黄瀬君が頬をつねろうとしてきたので雑誌でガードする。

「だって黄瀬君迷惑な子覚えてどうするの」

「あんたは少しおもしろいんで、仲良くなりたいんスよ」

笑顔を浮かべられてもうときめいたりはしなかった。ただうさんくさいとだけ思った。


「やめなよ、そういう嘘ばっかの笑顔気持ち悪いよ」


そう言うと笑顔が消え失せ、先程とは違う何かたくらんだような顔をして「へぇ、わかるんスか」といった。


「あー気持ち悪いは言い過ぎました、ごめんよでもほんとのことだからね」

「ねえ俺と付き合わないっスか?」

「頭打ったの?」


こればっかりには驚いて本気で心配して尋ねるとぐいと顔を近づけてくる。端整な顔が近くにあるとさっきとは違って緊張する。



「あんたのこと気にいったっス、俺のことまだ好きなんスよね」

「え、いや私が好きなのは雑誌の…」


「本物の俺もそのうち好きになるっス」

その自信は一体どこから来るのかきっぱりと言い切った黄瀬君に若干呆れながらも「ない」と告げる。



「…ふーん、まそれも今のうちだけっスよ。学校で会うの楽しみにしてるっス」

「……ああ、そう」



少しだけときめいたなんて秘密だ。






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