文化祭とか皆一致団結して絶対成功させようぜ!なんて言ったりしているのを見ると何故か冷めてしまう。
そう思うなら勝手にやればいいのにこっちまで自分の考えを押し付けて無理やり盛り上げようとするのはなぜなのか。
ひねくれてるだなんて自覚は充分にある。
(めんどくさいなあ…)
美術部という理由だけでクラス看板を頼まれたらなおさらだ。
おしつけがましいというか、断らない自分も自分だが。
絵具でただひたすらに書いていく。
美術部だからレタリングも看板もできるという思い込みはどうにかならないのかだろうか。
「あれ、名字さんまだ残ってたんスか」
声が聞こえたほうを向くとクラスで、というか全校に人気の黄瀬君がいた。(おもに女子)
「終わらないから」
彼がモデルをやっていてもちゃらけた人はあまり好きじゃないので視線を看板へ戻しそう答えた。
「へーうまいっスねやっぱ」
いつの間にか隣へ立っていた黄瀬君が看板をながめてそう言った。
「そんなことないよ、うまいと思うからそう見えるだけ美術部だからって考えを最初から持ってるからそう見えるの」
そう言うと目をぱちくりとさせて「クールっスね・・・」なんて呟いた。
「普通に部活に入ってなくたって上手い人だっているし、部活に入っているのは上手い下手に関わらず好きだからってだけの人もいるしね」
「もしかしてこの仕事嫌だったり?」
「…別に」
心の底から嫌だったがあえて言わないでおいた。
「文化祭なんだか楽しみじゃないって感じがするんスよ」
「……そうでもないけど」
「名字さんいつも離れた所から見てるっつーか、混ざろうとしないスよね」
「苦手なの、ああいう雰囲気」
そう答えるとしばらく黙りこんでから「あ」と声をあげこちらに笑顔を向けてくる。
「俺とまわらないっスか!?」
「嫌」
即答するとがっくりとうなだれ、しょげたような声で「なんでっスかー!」なんて言ってくる。大体なんで急にその話になったのかもわからない。
彼が人気があるのは誰でも構わず気さくな態度をとるのにも理由があるのだろうか。
「断られるなんて初めてっス…」
「さらっと嫌味だね、なら違う子誘えばいいんじゃないの絶対断らないよ」
「…それじゃあだめなんスよー……」
「考えて御覧?モデルの君とまわったら目立つ」
「じゃあ変装を…」
「ばれるでしょ…」
ため息をついて呆れた。変装して制服を着るなんて不審者にも見えなくもない、逆に目立つ。
「俺なら絶対名字さんを楽しませてあげられるっス!」
「自信家なんだねすごい、その自信他の子にまわしてあげてよ」
「俺は名字さんと回りたいんスよ!」
その言葉に若干体が熱を持ったのが分かった。
「…き、気をつけた方がいいよ…」
「何を?」
「言葉はもう少し選んで…じゃないと…」
変な期待すると言おうとした心を読み取ったように
「今のは正直な気持ちっス、期待しても大丈夫っスよ」
「…っばか!!」
なんなんだ黄瀬君は調子がくるわされる。
「だから、ね俺と文化祭楽しもう?」
「……考えておく」
そう伝えて自分の作業に戻る。
横では黄瀬君がずっと笑顔で作業をながめていた。
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