高尾君には約束通りデート、という口実での服選びに付き合ってもらうことにした。
部活が調度休みで本当に良かったと思う。秀徳はバスケが強いし休日もバスケ三昧だろうと思っていたので本当にラッキーである。
(……緊張する!)
ごめんなさい赤司君、赤司君に黙って違う男の人とデートしてしまう私を許して下さい。
一応自分が持っている中ではかわいいものを選んだつもりだし大丈夫だろう。
休日は人が多くごった返していた。
どこだろうなあと高尾君を探そうとしたとき「おーい名無しちゃん」と呼ばれて振り向くと高尾君が手を振っていた。
私服を見るのは初めてだったけどラフな感じで似合っていてかっこいい。
「か、かっこいいね高尾君…!」
「え、そお?俺的には名無しちゃんのがいつものイメージと違ってかわいいと思うんだけどねー」
「出たなハイスペック…」
さらりと褒めるなんてさすが高尾君、お世辞とわかっていても照れる。
「俺はいたって真面目なんだぜ?」
「も、もういいから行こうよ!」
「……赤司がいなきゃなあ」
「何か言った?」
「いんや何にも」
はぐれないように手でもつなぎますかなんて言ってはぐれないように手を握ってくるところももてるんだろうなあと思わせる。
赤司君がいるのに今高尾君とこうしていることに少しの罪悪感。でも明日少しでも赤司君の前でかわいい格好をしていたいので仕方ないと言いわけ。
高尾君は人ごみなんか関係みたいな感じですいすいと進んで行く。
「今日の目的は服選びなんだよな?にしてもさー俺なんか選んじゃっていいわけほんとに」
「うん!私、服のセンスないから」
「もうちょっと自信持っても良いと思うんだけどなあー」
オシャレなショーウィンドウの店に立ち寄り早速選んでみよっかと笑顔を浮かべて中へ連れてった高尾君。
「んーこっちもいいんだけどなあー俺は名無しちゃんピンクのが似合うと思うんだよね」
服を見ながら真剣に悩む高尾君、私なんかのために時間を割いてくれてほんとに申し訳ない気持ちになる。
「名無しちゃんはちなみにどっちが良い?」
高尾君が持つ2つの服は色違いのピンクと白。ふわりとしたワンピースだ。
「私は白…かなあ?」
「お?やっぱしー俺も最初そうだったからやっぱこっちにするか」
もしかしてあっさり買い物終わったのかなと考えていると
「ほかの店にもいいもんあるかもしんねーけどごちゃごちゃ悩んでたらきまんねーだろ?俺が似合うと思ったんだから絶対似合う」
と自信満々に言う高尾君に思わず噴き出して「さすがだね」と言った。
「さ、試着試着ー!」
近くにいた店員さんを呼び止めて試着室まで案内してもらう。
どきどきしつつ試着室に入って早速着替える。
「彼女さんですか?」
店員さんが高尾君にそう言うのが聞こえてどりきとする。
「いやー違いますよ、そうだったら良かったんすけどね」
高尾君は私が中で聞こえていることを知ってわざと言っているのか、鏡に映る自分の顔が若干赤くなったのを確認する。つくづく単純なやつと自分で思ってしまう。
「あ、そうなんですか?仲良いからてっきり…」
「やだもーやめてくださいよ」
「あ、あの…」
おずおずとカーテンを開けると「良くお似合いですよ」と店員さんがにっこり。
「やっぱな。俺の目にくるいはなし似合ってんぜ名無しちゃん」
それを聞いてほっとする。
その後高尾君が払うぜなんて言ってくれたけど遠慮しておいた、そこまで全部彼にやらせてしまうのは悪い。というかどれだけ良い男なんだと感動してしまった。
「ゲーセンでも行く?」
「そうだね」
高尾君とはその後適当にふらっと遊んでかえったのだがやっぱり罪悪感に耐え切れず今日のことを素直に赤司君に話すと「明日覚えておいてね」と電話越しでも背筋がぞくりとするような声で言われてしまった。
(ご、ごめんなさい赤司君…!!)