「名無しちゃんってさーマネージャーとかやってなかったわけ?」

「やってないよーやれるわけないって、でも何で急に?」

そう言うと少し驚いた顔をした高尾君が「じゃあ何で皆とそんな仲良いわけ?」と聞いてきた。


「えー…うーん…?たまに手伝ったり合宿いったりしてたからかなあ?」

「それもうマネージャーじゃん、そうなの真ちゃん?」

「まあ確かにそうなのだよ」


今考えるとマネージャーでもないのによく手伝っていたなあと思う。まあ大抵がお願いされて断れなかったり桃井ちゃんにひっぱっていかれたりがほとんどだったが。
赤司君の姿を見れると思うとそれほど苦ではなかった。


「じゃあ秀徳のマネージャーもやればいいじゃん」


さらりと爆弾発言をおとした高尾君に何を言ってるんだという視線を送るが当の本人は笑ったまま「俺ってさえてるー」なんていった。

「な、真ちゃんもいいと思わねえ?仕事真面目にやんねえやつよりは経験もある名無しちゃんってぴったりだと思うんだよなー」

「…そうかもしれないな」

「やめてよ緑間君。今はデレ求めてないよ」


マネージャーなんてめんどくさいし休日も部活がある場合大事な赤司君との約束にいけなくなる。


「最近役に立たないやつばかりなのだよ」

「マネージャーにあやまりなよ…」


一生懸命彼女たちも仕事をしてるだろうに陰でこんなことを言われてることを知ったら悲しいだろうなあ。


「バスケばかりみて仕事をしないんだぜ?こちとら見てほしいわけじゃなくてサポートしてほしいんだよねー」


「………」


高尾君が困ったように笑って言うからそれほどでもないようにおもえるけどまあ私ごときに頼むということは大分あれなんだろうか。



「今日一日やってみてだめだったらそれいい?」

「お、まじで!さっすが名無しちゃん!」

お試しという意味で言ったにもかかわらずここまで嬉しそうだとなんだか頑張る気がでてくる。



「そのかわり1つお願いがあります」



びしりと指をたてると高尾君が首をかしげた。




「明日デートしてくれませんか」


そう言うともちろんびっくりした顔をしていたあの緑間君ですらちょっと驚いた様子だった。



「お前…浮気なのだよ」

「違うから!!聞いて!」

「名無しちゃんってば俺のこと…」

「違うって…!いや、だからね…赤司君に会えるのはもうすぐなんだけど着ていく服とか全然決めてないしそれに、女の子がかわいいと思うものと男の子がかわいいと思うものは違うって言うし、服選ぶのに付き合ってほしいなあ…なんて」


あれ、自分こんなに乙女だったかと思うぐらいになんだか恥ずかしくなってくる。
いま思えば服選ぶだけで何でこんなに悩んでるんだ。



「ふん、くだらん」

ですよね、やっぱ緑間くんそう言うと思ったよ。
ショックを受けていると


「俺は別にいいけど?」

「へっほ、ほんと?」

「だってマネージャーやってくれんだろ?ならそんぐらいお安いご用だって」

やっぱり高尾君素敵な人だなあと思うと同時に緑間君に少しの怒り。
中学時代からの知り合いなのにこんなに冷たいなんて今にはじまったことじゃないけどちょぴっと悲しいよ。


「緑間君のファッションセンスになんかたよんないもんね!緑間君ファッションセンスないもんね!」

ぎろりと睨まれたのでもう言うのはやめておいた。















秀徳の部活というのは随分厳しいというかハードだった。
帝光中の部活も見ていたりした私はそんなに驚かなかったけどハードだった、1年にしてレギュラーをとった緑間君と高尾君はすごいんだなあと感心したり。
皆必死なのがよくわかる、なんだか昔を少しだけ思い出した。

赤司君の考えるメニューに必死なってくらいついていくのはきつそうだったけど皆バスケが好きで頑張っていた。
崩れてしまうとは思わなかったけど。


ある日突然いなくなった黒子君。
練習にこなくなった青峰君。
憧れていた人がいなくなった黄瀬君はあからさまに沈んでいた。
緑間君はそれほど変わらなかったけどひたすらバスケをやっているだけ。
紫原君は赤司君に逆らおうとはしない、練習には出ていた。

そして勝利という考えしか持たなかった赤司君。


少しずつパズルのピースがなくなっていくような感じだった。





「ぼーっとしてんな轢くぞ」

「えっあっはい!すいませんんん…!!」


いきなり物騒なことを言われて振り返って反射的に謝る。


「お試しだろうがなんだろうが真面目にやってもらわなきゃ困る」

「…すいません」


顔を上げると確か宮地先輩と高尾君がよんでいた人だったと思う、曖昧なので自信はない。


「お前帝光中のマネージャーだったんだろ?俺生憎あそこ好きじゃねえから」

「好きな人の方がいないと思いますけど」

「なんでそう思う?」



「強すぎてもう誰もやる気をなくしていたじゃないですか、本気で向かってくる人のほうが少なかったですよね」



「キセキの世代なんて呼ばれて、かわいそうですよね」

決してばかにしているわけじゃないけど外側にそんなレッテルをはられている彼らを少しだけかわいそうだと思った。
強いから勝てないなんて誰が決めたわけでもないのに、諦めなければわからないのに。


「…お前かわってんなさすが緑間の知り合いだわ」

「どういういみですか」

「そのまんまだ、じゃあ仕事続けろよじゃねえと刺すからな」


爽やかでいけめんなのに口調が物騒でどこか怖い。
それが宮地先輩という人のイメージだった。










「俺的名無しちゃんやっぱ向いてると思うわ」

「…向いてないって」

休憩中に高尾君にドリンクとタオルを渡すとぽつりとそう言われた、ていうか今の動作は別に常識だと思うのだが秀徳のマネージャーがどれだけだめなのか心配になる。


「強要はしねーからゆっくり考えて大丈夫だから」

「うん……」


高尾君はもう優しすぎて一体何なのだろう。


















『もし名無しがマネージャーをやるなら会った時敵同士になるな』

「………」


赤司君に相談するとそう言われてそういえばと思った。もしかしたら桃井ちゃんもこんな思いだったんだろうか。


「やらない…」

『いいのか?せっかく誘われたのに』

「赤司君応援できなくなっちゃうもん」

『…嬉しいよありがとう』


赤司君の試合でも彼を応援できないのは辛いし高尾君にも心苦しかったけど仕方ない。


「……そう思うとさ、桃井ちゃんって大変な思いしてるんだね」

『そうだな…あいつは皆のマネージャーだったからな』

「…皆敵同士なんだもんね」

『しょうがないさ、今となってはもうどうにもできないからな』



「赤司君、お手伝いぐらいはいいよね」

『……ほんとは気に食わないけどいいよ』

気に食わないといつつ許可をくれたのでほっとする。
高尾君には明日付き合ってもらうわけだし何も返さないのは悪い。



「緊張してきた…赤司君もうすぐだよ…どうしよう」

『僕に会うのが嫌なのか?』

「ち、ちがうよ…!」

『知ってる』


くすくす笑う赤司君になんだか恥ずかしくなった。
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