彼女と修羅場になったお話
天気が良かったし授業なんて受けてもあくびしかでてこないので屋上へ向かう。
そのついでに名無しもよぼうと思い携帯を開き「屋上にこい」とだけ打ち込み送信する。
扉が開いて誰かが屋上に入ってきたような気がしたが別に気にすることなんてないのでそのまま横になる。
「あのさ大輝ちょっといい?」
まさか話しかけてくるだなんて思ってなかったので目を開けて相手を確認する。
最初は全く誰だかわからなかったが良く顔を見て思いだし昔遊んだことのある女だと気付いた。
名無しと付き合っているのはもう公になってから昔遊んだやつらは話しかけてくることはそうそうなかったし、俺としてもそのほうが楽だった。
「ん、あーわりぃ後にしてくんねえ?」
「名無しさんさんと本気で付き合ってるわけ?」
後にしてほしいと言ったにも関わらず質問を投げかけてくる。めんどくさいと思いつつも適当に言葉を返す。
「あたりめーだろ、最初からそうだっつーの」
だるい。これから先の予想がなんとなくついてそう思った。
今になって自分の行動を後悔しても遅いのだが遊んだだけで「責任とって」だの「私が本命じゃなかったの」だの言ってくる奴らが増えた。
遊びって言うのは言わずともなんとなくわかっていたくせに今更そんなことを言ってきて何がしたいのだろう。
「じゃあ付き合っててもいいから、ヤらない?名無しさんさんどうせヤらせてくんないでしょ?だから、ね?」
「うぜえヤんねーよ、お前が名無しの何を知ってんだよ」
そう言って睨みつけるとひるんだのか、押し黙った。
「大輝こんなんじゃなかった…!なんでこうなっちゃったわけ!?」
「さあな俺は最初からこんなんだ」
逆切れされる意味がわからねえ。
付き合ってもねえのに彼女面されるなんて煩わしい。
「…にそれ」
ぼそりと何かつぶやいたかと思うと突然寝転んでいた自分に影がかかる。
気がつくと女の顔が目の前にあって、理解するのに時間がかかった。
「…っやめろ!!」
怒鳴りつけて押すと女の体がよろめいて後ろにはじきとばされる。
「青峰君…」
全身が急にさっと寒くなったような気がする。
名前を呼ばれたほうを見るとそこにはやはり自分の彼女が立っていて。理不尽だが今更呼ばなきゃよかったなんて思う
さすがの女も罰が悪そうな表情をうかべていたが、俺にとっちゃあ軽い問題ではすまない。
昔のことがあるから、名無しに同じ思いはさせないと誓ったのに。
「これを見せたかったの?」
てっきり怒るんだとばかり思っていたので苦笑いの彼女に胸が痛くなった。
いっそ怒ってくれた方がらくだった。
これじゃあ前と何も変わっていない。彼女の声は冗談なんかで言ってる雰囲気じゃない。
「ちげえよこいつが勝手にやってきたんだ」
「大輝がどうしてもっていうから…!」
「は!?てめ何嘘こいてんだ!!」
してやったといわんばかりの笑顔を浮かべてこちらを見る女に腹が立った。殴ってやろうかと思ったが彼女の手前何とか抑える。
「…青峰君のばか」
「ちげえって!!」
今にも泣きそうな顔をしている、最悪だ。
元はといえば隙を見せていた俺も悪いのだがまさかこんなことになるなんて思ってなかった。
タイミングが悪い。
「もう知らない」
その声がやけに冷たく響いた。