「相変わらずバスケしてると親父ちげーのな」
「そう?あんまり変わらなくないかな?」
朝食の準備をしながら起きてきた息子の言葉にこたえる。
現在中2になり、成長してきた姿はだんだん大輝君に似てきたなあなんて思う。
「いや、スケベ親父と全然違う」
返ってきた答えに苦笑いする。
「もしかして今テレビでNBA入ってるの?」
「んーまあちらっとな」
焼けたパンにバターを塗り、コーヒー牛乳と一緒にテーブルに置く。
ちらりとテレビを見るとそこには大輝君の姿が。
「お父さんと唯まだ寝てる?」
「寝てんじゃねー?まだ起きてこねーし」
パンを口に含みながら蓮がそう答える。大輝君に容姿は女の子ということもあってかさほど似なかったが朝おきれないところやしぐさが似ているのは唯のほうだ。オヤジ臭くなってきて最近心配である。
一方蓮のほうは見た目は大輝君に似たもののあまり中身が似ていない。不思議な感じだ。
「起こしてきてくれない?」
「えーじゃあ母さん親父よろしくな」
「うん、じゃあ唯のことお願いね」
頼みごとをしてもあまり嫌そうな顔をせず引き受けてくれる、良い子に育ってくれて良かったなんて思う。
一応起きてくるであろう娘の分の朝食も用意してから寝室へと向かう。
階段を昇るにつれて部屋は近づいてくるものの物音すらしないということはまだきっとぐっすり寝ているのであろう。
ドアを開けてみるとやっぱり寝ていた。
「…大輝君」
ベッドに近づいて呼びかけてみるも聞こえてくるのは規則正しい呼吸音。
「大輝君」
先程より少し大きな声で肩をさすりながらよびかけてみるもそれでも目が覚めることはなかった。
「ほんと朝苦手なんだから…起きてよー!」
今度は軽く叩いてみると少し唸り声をあげたので起きるかと思ったがまたすぐにすーと聞こえてきたのでため息を吐く。
「ねぇ…おき」
続けて言おうとした言葉は突然引っ張られた腕によって続かない。
そのまま体ごと抱きしめられ布団の中にくるまることになってしまった。
「…起きてるでしょ」
「…おはよ」
ゆっくりと目を開けそう言った大輝君にため息をつく。
「もう朝だよ、それに私まだやることあるんだけども」
「んなこたあ見りゃわかるっつーの、もう少しぐらい寝てもいいだろ」
「だめだって」
「じゃあ名無しがおはようのキスをしてくれたらな」
「……毎日してるじゃない」
「俺からな」
逃げようと思ってもがっちり腕でホールドされているので逃げることもできない。
「…れ、んんッ…!」
蓮と息子の名前を呼ぼうとしたときそれは大輝君の唇で遮られる。
「ばっかおめー!あいつきたらめんどくせーだろ!」
「結局するんじゃない…!」
「今のはなしだぞお前が悪い」
「つーかもういんだけどね」
聞こえた声にそちらを向くと腕を組んで壁にもたれかかってこちらを見る蓮がいた。
「いい加減朝から母さん襲うのやめろって親父」
「ったくうっせえなお前もいい加減夫婦の邪魔すんのやめろよ」
「そう言われても助け求めてくんの母さんだし?」
「マザコンはモテねーぞ」
「じゃあ俺マザコンで良いよ、母さん好きだし」
その言葉にきゅんときて思わず息子を今すぐ抱きしめたい衝動に駆られたが動けない。
「私も蓮のこと好き!」
「てめー浮気か!!」
すかさず大輝君が頭を小突いてつっこんだ。
「いやいや息子に対する愛情でしょう!」
「ざんねーん親父負けたな」
にやりと笑ってばかにしたような笑顔を向ける。
「負けてねえよ!!」
そんなやりとりに笑いながらも今日がはじまる。
我が家の朝は毎日騒がしい。