「ねーママー何見てるの?」
「んーパパが載ってる本だよー」
ソファにすわって雑誌をながめているとおもちゃに飽きたのかこちらによってきた息子の翔太を足の上にのせて雑誌を見せる。
涼太君と結婚して子供も生まれてこうしている時間も幸せだなあなんてしみじみ思う。
息子の翔太は涼太君に似て顔は結構整っていて将来有望なんじゃないかなと思う。
涼太君は今人気の俳優で、モデルもこなしている。
多忙のせいで会えることは少ないけどそれでも活躍をテレビや雑誌で見ていると嬉しくなる。
「…かっこいいねえぼくもこんなふうになりたい」
雑誌を眺めてぽそりとそう言った。
「なれるよ翔太だってかっこいいもん」
そう言って頭をなでる。
「ほんと?ぼくもかっこいい?」
きらきらした目で再度そう尋ねてきた。
「うん、パパに似てかっこいいもん」
そう言って抱きしめる、小さい手で必死に抱きしめ返そうとしてくれるのがまた可愛い。
「ママさみしい?」
こちらを見たままふと小さな声で首をかしげてそう聞いてきた。
「…寂しくないよ、だって翔太がいるじゃない」
寂しくないといえば嘘になる。けど今はこの子がいる。
「ぼくがいるからね」
そう言われて思わず泣きそうになる、分かっていたのかななかなか家に涼太君が帰って来られなくて寂しかったってこと。
「…ありがとう」
ピンポーンとその直後インターホンがなる。
「ごめんね、ちょっと待ってて」
そう告げて翔太を下ろし玄関へ向かう。
「はーい」
そう言って開けた途端体が引かれ抱きしめられる。
「ただいまっス」
ふわりと香るきつすぎない香水、ずっとずっと聞きたかった声。
「おかえりなさい…っ」
ぽろぽろと涙がこぼれる。
少しの間会えなかっただけなのに弱いなあなんて思う。
「あーやっぱ名無しが傍にいると安心するっス」
なんて言ってさらに腕に力をこめてくる。
「あーパパだー!!」
気になったのかこちらに向かって翔太が走ってくる。抱きしめていた腕を慌てて離す。
「お、元気にしてたっスかー?」
息子の顔を見て嬉しそうに顔をほころばせる。
慌てて涙をぬぐうが「ママないてるの?」と気付かれた。
「な、泣いてないよ…!」
「わーパパがママをなかせたーパパなんてきらいー!」
そう言って涼太君の元へ走って行こうとしてた足を止めて私の前に立つ。
「ひどいっス…久しぶりに帰ってきたパパにそんなこというなんて…!」
「ひどいのはパパだもん」
ほっぺを膨らませていた。
「……ママをずーっと1人にして」
まさか涼太君に言うなんて思ってなくてどうしようか困った。
「あ、あのね翔太別にママは「そうッスね、いくら仕事とはいえずっとママを1人にしちゃったのは俺っスもんね」
涼太君が言葉を遮ってそう言った。
「でも、翔太が守ってくれたんスよね?」
「…うん」
優しい笑顔でにこりと笑いかけると小さくうなずいた久しぶりでも息子のことがわかっているというかさすがだ。
「偉いっスよ」
そう言って近づき頭をなでる。
「…パパごめんなさい……」
「ん?良いっスよ」
にこにこと笑ったまま抱き上げる。
「今日は家族団欒で過ごそう、ね?明日も休み貰ったからどっか行こうっス」
「…うん!」
寂しさなんてふきとんでしまって明日はどこに行こうかなんて考える。
「それと今まで会えなかった分いっぱい充電するスからね?」
顔が思わず赤くなる。息子に聞こえないようにこっそりと耳でそう告げる彼にずるいと思った。
「パパママとあんまくっついたらだめ」
「え、急にどうしたんスか?」
若干焦ったように涼太君が尋ねる」
「ママはずっとぼくがまもるからパパはもういいのー」
「ダメっスーいくら可愛い息子でもそれはいただけないっス!」
「だーめーー!」
「そっちがだめっス」
「子供相手にむきにならないの」
「…う…だって…」
ため息をつきながらそう言うと若干拗ねたような顔を浮かべる。見ているとやっぱり親子だなあなんて思う。
「名無しは俺のじゃないスか…」
ぽそりといった彼になんで嬉しいことばかり言ってくれるのかと頭を悩ませる。
これじゃあ家にいる間ずっと心臓が持たない。