彼女とお祭りに行くお話2
「すごい人だね」
「そうだなー人のせいかしんねえけどあっちいしよ」
ラフな格好なのに確かに青峰君は暑そうだ。
とかいう私も浴衣という風の抜ける場所が少ないものをきているので暑くないわけがない。
「なんか食いてえもんねえのか?」
歩きながらそう尋ねられた。
「青峰君はないの?」
「遠慮すんなお前の食いたいもの言え」
ぶっきらぼうだがそんな気遣いに嬉しくなる。
「じゃあ…いちご飴」
「おう」
そう返事をすると屋台のほうへ向かう。
人の多さにぶつかりそうになったりして、もし手が繋がれていなかったらはぐれてしまっていたのだろうかと考えて少しだけ握る手に力をこめる。
「おっちゃんいちご飴ひとつくれ」
「はいよ!おっもしかして兄ちゃん達カップルかい!?いいね〜お嬢ちゃん浴衣似合ってるよ」
「あ、ありが「ああ俺の彼女だ」
お礼を言おうとした言葉を遮って青峰君はお金を払って飴を受け取るとすぐに歩き出した。
「あ、青峰君…!」
慌ててついていこうとおじさんに軽く頭をさげて自分も歩き出す。
「ほー青春だねえ」
なんてにやにやしていたおじさんには気付かずに。
「青峰君さっきのおじさんせっかく褒めてくれたのにどうしてあんな態度とるの」
そう言うと青峰君は持っていたいちご飴を丸ごと私の口の中に入れた。口がふさがって言葉がしゃべれない。
「お前の浴衣見るのは俺だけでいいんだよ」
思いもしなかったその言葉にさっきの行動をつなげると嬉しくなるが
「あ…あほ…」
いい加減口の中の飴をとってほしい。棒は青峰君が持ったままの状態なのでどうすることもできないのだ。
「あ?誰があほだと」
「ひ、ひが…!」
違うと言おうとした言葉さえうまくいえない。
そうしているうちに苺をおおっていた飴はどんどん溶けてきて口からこぼれそうになる。
「…あ。わりぃ」
苦しそうな彼女をみて気付いたのかさすがの青峰もこれは悪いことをしたと思い飴をとる。
「あ、青峰君のば…」
ばかと続くはずだった言葉は顎のあたりの生ぬるい感触にかき消された。
「甘いな…飴ついてんぞ」
ぺろりと舌を出しそう言った青峰君に顔が赤くなる。
「な、舐める必要ないと思うんだけど…!」
「いいじゃねえかふくもん持ってねえだろ」
「そ、それはそうだけど…」
「じゃいいだろ」
なんだか腑に落ちないがそう言われるとほんとのことなので何も言えない。
「ていうか青峰君が最初に飴を入れたりしなきゃこんなことにはならなかった…」
「悪かったって反省してる」
「嘘」
棒読みで言われても全然効果がない。
「焼そば買いに行くぞ」
「えっ」
話はまだ終わってないのに手を引っ張られてつられて足も動き出す。
「…もう」
小さくため息をつくがきっと祭りはこれからだ。