もう何か月連絡をとってないのかわからない。
そんなにたってはいないと思うけれど、これでよかったのだ。
私にとっても翔ちゃんにとっても。
私の問題で翔ちゃんを一方的に突き放すような形になって少し心苦しいけど、近くにいるときっと私はおかしくなってしまう。
「いいなーそんな幼馴染がいて」
うらやましいのは私のほう
幼馴染じゃなかったら普通に恋することだってできたかもしれない
*
「あんた最近元気ないわよね」
窓をながめてぼーっとしていると急にそんなことを言われた。
「…そうかな」
自分でそんなつもりはないので曖昧に答える。
「…もしかしてこの前の来栖君の話……」
「やだなぁ違うって、なんにも悩んでないよ」
このまえの話を聞いていろいろと思いだしてから自分でもなんだかおかしいのはわかってた。
(まだあきらめきれてないってことかな…)
「そう…ならいいんだけどさ」
「あのさ、1つ聞いてもいい?」
聞いておきたいことがあった。
「何?」
「翔ちゃんって告白されて付き合ったりしてるの?」
こんなことを聞いたら私が好きだとばればれかもしれないが翔ちゃん本人に知られなければ別にもうよかった。
「あーなんか全部断ってるらしいわよ」
「そっか…」
聞きたいのはそれだけ。
もしかしたら彼女がいると聞いたらすっぱり納得して諦められると思った。
どうせふられる、関係が崩れるのが怖い、これだけ会わなければ好きな人がいるに決まってる。だとかそんなことを考える私はほんとにただの弱虫で駄目な人間だ。
いつの間にか目頭が熱くなっていた
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「ただいま…」
学校が終わり家に帰っても誰もいない。自分の声だけが響く。
早乙女学園から離れた学校に行きたかったので無理を言って一人暮らしをさせてもらった。
テレビでもつけようかと思った時携帯が震えた。
(…お母さん…?)
「もしもし?名無し?出てくれてよかったわぁ」
相変わらず変わらない。
「どうしたのあんまりかけてこないのに…」
「実はね、翔君から伝言を頼まれて」
その名前に心臓が早くなる。
「"20日あけておけ"ですって、なんかあるのかしらね?」
電話越しでも笑っているのがわかる。
「…別になんもないと思うよ」
「そうかしら?ふふっ」
少し話をしてから電話を切る。
「20日…」
*
結局20日あけておいてと言われたもの何も知らされないまま当日になってしまった。
(何なの一体…)
別にどこかに呼び出しをされたりしてるわけでもない。かといって待ち合わせなどもない。何がしたいのかさっぱりだ。
家のインターホンがなった。
正直めんどくさかったが、しつこい人もいるので一応でることにした。
「はーいどちらさ…ま…」
ドアを開けて思わず固まってしまった。
そこにいたのは
「翔ちゃん…」
「久しぶりだな」
*
「どうぞ」
「さんきゅ」
一応お客さんなのだからお茶ぐらいはだしておく。
はっきりいうとすごく気まずい。
「翔ちゃん?」
「なんだ?」
「今日はなんで…えっと…その…」
「俺20日あけておいてくれっていったの守ってくれたんだな」
「そりゃあ一応…」
なんだかうまくしゃべることができない。
「俺さ、アイドルとしてデビューするんだ」
いきなりいわれたので驚いたが少しして理解した
「それはつまり…夢がかなったてこと?」
「あぁ」
何というか素直にうれしかった。幼いころからアイドルに憧れている翔ちゃんを見てきたからか彼の夢がかなうのはすごおくうれしい。
「そっかおめでとう翔ちゃん」
「おう!」
そういってニカッっと笑う。
「わざわざここまで報告しにきてくれたんだありがとう」
今は素直に笑えていた。
「それもあるんだけどさ…お前…」
「ん?」
「あの時の約束覚えてるか?」
それは
「えと…それって」
私が思っているのと
「小さい頃…」
同じもの?
「俺のお嫁になれってやつ」
翔ちゃんが私の言葉に続けてそういった。
少しの沈黙の後
「…覚え…てる…よ…」
自分でも驚くほど小さい声だったと思う。
それが聞こえたのか翔ちゃんは
「そっか」
そう言って私のほうを向いた
「俺あの時の約束本気だったんだぜ、だから、名無し」
静かな部屋に声がよく響く。
「俺さお前を守れるぐらい強くなれたとか自分ではそう思ってるけど実際わかんねぇ。けど、ずっと離れて過ごして思ったんだ」
ただただ聞いていた。
「俺にはお前がいてくれなきゃだめだって…名無しいつからか俺を避けるようになっちまって…それから全然はなさないまま学校も別々になったから俺お前に嫌われてんのかもしれないけど、それでも…」
「ちがうよ…」
「嫌いになった…わけじゃないの…」
その言葉に翔ちゃんが目を見開く。
「…ごめんなさい」
やっぱり
「むしろ翔ちゃんのこと好きだった」
気持ちって抑えたりできないんだね
「それって…」
「幼馴染じゃなく一人の男の子として好きだったの」
翔ちゃんはいまだに驚いたままだ。
「幼馴染だから、好きになったりすることなんてないって思ってた。でもいつの間にか好きだった。でも、これを伝えたら翔ちゃんはきっと困ると思ってずっとかくして気付かれないように、離れてきたの」
「…俺は嫌われてなかったっていうことか?」
翔ちゃんがしばらくしてから口を開いた。
静かにうなずく。
「…はー」
すると翔ちゃんの口から聞こえたのは大きなため息。
「俺ずっとお前に嫌われたかと…じゃあ…俺達両想いだったんだな…」
今までの話をつなげるとそうなる。
今まで悩んできた私はばかみたいじゃないか。
「名無し、改めてもう一回言わせてほしい。俺これからもっと成長して絶対お前をまもれるようになってみせる。だから、
俺の奥さんになってくれますか?」
気がつくと涙があふれていた。
「よろこんで」
あの日の約束を今