テストというのは好きな人がいないと思う。
あんなもの世の中になくていいと思うしなんであるのかわからない。成績が悪ければ部活でペナルティが出るしテスト期間中は好きな部活だってできない。
「あーやばい…ぎりぎりセーフ…」
「まだいいじゃねーかお前赤点ねーんだろやべーぞまじで今回は…」
隣の席でテストを紙を睨みつけ頭を抱える青峰っちはたぶん赤点をとったんだろう。
勉強もせずストバスばっか行っていたのを知っている。
「桃っちに教えてもらってたんじゃないんスか?」
「あーほとんど聞き流してたしなーおいお前何点だよ」
ひょいと身を乗り出して俺の言葉を軽く聞き流した青峰っちはテストをじーっとながめていた名無しっちのテストを奪い取る。
「あっ、ちょ、青峰君…!」
「…………なんだこれ」
名無しっちのテストを見た瞬間青峰っちが固まり目を見開いたまま動かなくなった。どうしたんだろうと気になり俺も覗いてみるとそこには3ケタばかりの点数、俗にいう満点ばかり並んでいた。
「な、なんスかこれもしかして名無しっち今回1位なんじゃないスか」
「お前5教科全部100点なわけ?何で、おかしいんじゃねえの」
「1位かどうかはわからないけど、真太郎に勉強教えてもらってたって言ったでしょ」
少しだけしてやったりみたいな表情を浮かべて青峰っちを見る名無しっちは前に言われた言葉を忘れていないのだろう。
「にしてもなーお前緑間より点数とってんじゃねえの」
「真太郎はケアレスミスが多いからね少しだけ」
「ケアレスミスって何スか?」
「さあ、料理じゃねーの」
「違う!」
にしても緑間っちの妹だから勉強はそこそこできるんだろうなぐらいしかイメージになかったのだがこれほどできるなんて驚きだった。
赤司っちはずっと1位をキープしていたが今回は危ういんじゃないかと思った。
「病院ってね暇でね、私勉強ぐらいしかすることなかったの」
その言葉に何故か言葉がつまった。
そういえば彼女はずっと病院通いでほとんど外に出られなかったときいた。それはすなわちずっと孤独だったことをあらわすものでなんだか悲しくなった。
「おーおー偉いじゃねーの」
そう言ってくしゃりと青峰っちが頭をなでると嬉しそうに笑っていた。
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「どうだ真太郎妹に負ける気分は」
「それをわざわざ聞くのだな、名無しならそれほど悪い気はしないが今回も貴様に負けたのだよ赤司」
「そうだな、でも俺も今回は驚いたよ誰かに負けるなんて初めてだ」
ずらりと名前が並ぶ順位表の1番上には緑間名無しの名前。そしてその下には赤司征十郎、緑間真太郎とそれぞれ1点の差で惜しくも並んでいた。
「真太郎の妹は随分と頭がいいんだな」
「ふん当然だろう」
勝利は絶対。
その信念が心の中にある赤司はますます気になっていた。初めてテストで敗北をさせた少女。それも学校には通っていなかったというのだから驚きだ。
「はーやっぱ1位じゃねえの」
「名無しっち見える?」
「人が多くて…」
「背がちっせえからだろ」
「ちょ青峰っち…!」
人ごみの中からよく知った声が聞こえてきて振り向くと部活のメンバーと今まさに考えていた人物。
気がつくと足はそちらへ向いていて。
「緑間名無しさん」
「あ、はい!」
そう言ってこちらを向いた彼女は驚いた顔をしていた。
「この間ぶりだね、部活はよく見学できたかな」
「おかげ様で…」
せわしなく視線をまどわす彼女は緊張しているのかせわしない。
「テスト1位おめでとう、俺は誰かに負けたのはじめてだったよ」
「ご、ごめんなさい…」
まるで悪いことをしてしまったとでもいうような顔をして謝罪の言葉をのべる彼女は人事を尽くしていると常日頃から言っている兄とは随分かけ離れていた。
「謝らなくていい、努力が足りなかった俺が悪いからな」
「でも、その、今回はまぐれだと思うし…ほんと偶然で…」
「やめてやれよ赤司こいつ男苦手なんだと」
助け船をだした青峰がそう言った、後ろではらはらしていた黄瀬もその一言でどこかほっとした表情になった。
「それに威圧感がある」
「どういう意味だ?」
「なんでもねえ…」
「20周追加だな青峰」
「まじかよ!!?」
「怖がらせたのならすまない、ただ部活仲間の妹だし俺を超える人間がいたことに驚いてね」
「い、いえ…でも、赤司さんも1点差だし…もしかすると負けてたかも…しれないです」
ちらりと点数を見上げてそう言った。
「無理な敬語はいいよ、同い年だし遠慮することはない」
「なるべく頑張りますね…」
「そうだよかったら今度のテスト勝負しないか」
「え……」
「赤司っちてば何言ってるんスか名無しっちだって偶然だって」
「負けたらそうだな…1つ何でもしてあげよう、そのかわり俺が勝ったらお願いがあるんだ」
その一言に彼女の表情に不安が浮かんだのが分かった。
「バスケ部のマネージャーやってみないか?」