「私、友達できるかな」

真っ白な病室で白い衣服に身を包んだ少女がぽつりとそう呟く。


「できるのだよ、大丈夫だ」

「そうかなあ…でもずっと学校行ってないし今更なじめないかも」

「心配しすぎなのだよ、勉強なら俺が教えてやっただろう」

「心配なのはそっちじゃないんだけどね…」

苦笑いを浮かべ、表情にはまだ不安を隠しきれない様子で窓の外に広がる真っ青な空を見つめる。







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「朝練とかまじ眠いわ」

「何言ってるんスか!遅れたら赤司っちに怒られるっスよ!」

せかせかと前を歩く黄瀬に対しまだ眠気が飛ばない青峰はあくびをしながらのんびりとあるいている。


「いいじゃねーかまだ時間はあるんだし」

「今何分だと思ってんスか…もう5分しかないんスよ」

呆れた顔で黄瀬が呟くと動きを一瞬止めすぐさま黄瀬を追い越し走り始めた。


「お前が一番最後なら少しは説教が短くなるだろ!」

「あっちょ!!せこっ!!!!!!!」

慌てて追いかける黄瀬に対し、余裕そうだが表情には少しの焦りが見える青峰。
赤司に怒られるとなるとシャレにならないぐらい説教が長い、2人とも必死で走っていた。









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「よし!!!」

「ちょ、もう…なんなんスかあんた…ひどすぎっしょ…」

ぜえぜえと全力疾走してきた2人はこれから部活だというのにもう汗が流れる。



「何してるんですか2人ともうるさいですよ」

「ちなみに2人とも間に合っていないぞ残念だな」

部室にはもうすでに皆到着しており、2人に気付いた黒子と赤司が声をかける。紫原はというとお菓子をいつものように食べながらまだ眠いのか少しだけぼーっとしていた。


「げっまじかよ…つってもなあ?最後は黄瀬だし」

「青峰っちひどいっス!同じぐらいにきたじゃないスか!!…って緑間っちいないんスか?」

周りを見渡して1人いないことに気付いた黄瀬が赤司に問いかける。


「ああ緑間は今日は来ないそうだ」

「えええ緑間っちが休むとかはじめてじゃないスか!?なんかあったんスかね」

「人事を尽くすだの言ってる癖にあいつさぼりかよ」

「青峰君、君と違って緑間君はそんなことないですよ」


「何でも家の用事でどうしても外せないことらしい」

「へえー葬式とかっスかね?」

「お前ばかじゃねーの朝からするわけねーだろ、たぶん寝坊だって」

「君たち両方ばかですけどね」

まともな考えが出ない2人に黒子が冷静につっこむ。
相手にするには精神的にもなんだか消耗する2人だ。


「今日は特別に遅刻は見逃そう早く準備するんだ」

「まじっスか!!」

ぱああと顔を輝かせる黄瀬に対し「まじかよ…俺の努力」と青峰が残念そうにつぶやく。



「そのかわり次はないからな」

と笑顔で言う赤司に顔をひきつらせながら頷く。



















「あーだりいな部活終わった後だと余計授業がめんどくせー」

「だからって朝からさぼろうとしないでください」

「そうっスよ、授業なんてただ聞いてればいいじゃないスか」

「君たちほんとなんなんで……」

途中で言葉が消え、窓の外の1点を見つめる黒子に「どうしたんスか?」と黄瀬ものぞきこむ。



「緑間君が女の人と歩いてます」

「はあまじかよ!?どこだよ」

面白いことを聞いたとでもいうようににやにやしながら青峰も緑間の姿を探し始める。


「あそこです」


黒子が指さす場所には確かに緑間が、そして隣には



「…………」

「…………美人ですね」

「……あいつ彼女いたのか………」


言葉を失う黄瀬に対し驚いた様子でぽつりとつぶやく。



「何スかあの美人、緑間っちが彼女なんて聞いてないっス」

「あの人年下でしょうか、見たことないですけど…」

「年上じゃねーの?にしてはやけに童顔だな」

確かに美人に分類されるほうだとは思うが顔にはまだ幼さが残る。


「…胸はまあまあ」

「さいてーっス」

「どこ見てるんですか」

真面目な顔で見る青峰に冷ややかな視線を送る2人。
この男の頭はどうしようもないらしい。




「はーにしても緑間っちに彼女っスか、それも美人でかわいい」

「彼女かまだわからないじゃないですか、もしかしたら知り合いの人って可能性も」

「部活さぼって朝からデートか…」

部活にこなかったという事実を忘れていた2人は青峰の言葉にやっぱり彼女なのかと疑う。



「これは直接聞いてみなければどうにもなりませんよ」









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朝聞いてみようとは思ったもののクラスが違うし何より緑間の姿を見かけることがなかった。


「見つかんなかったスね」

「ヤってんじゃねえの?」

「引くっスわー」

「だよなー」

「いや、あんたの思考回路にっス」





「えー突然だが新しい人を紹介する、転校生ってわけじゃないんだが体が弱くてずっと学校を休んでたんだ仲良くしてやれよー」

担任が教室に入ってきてすぐさまそんなことを言って「それじゃはいっていいぞー」と声をかける。

教室の中に入ってきたのは、




「あの子…」

「あ?緑間の彼女じゃねーか」

と驚く2人に「それじゃ自己紹介」という担任の言葉で真実を知ることになる。



「緑間名無しです、よろしくお願いします」


透き通るような声に誰もが綺麗だと思うだろう、だがしかし注目すべきはそこよりも



「緑間って…」

「まさかの…兄妹かよ……」


これで朝の事件と納得がいく。



「それよりもな……」

「兄妹とか初耳っスわ……」


意識したわけではないが2人で思っていたことが一致する。




聞いてねえよ緑間。

聞いてないっスよ緑間っち。

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