恋をさせた責任
「いったい、どういうことですか」
目の前のアズールは、睨むように眼光を鋭くさせてこちらに詰め寄ってきた。
日が沈んですぐの頃。オンボロ寮に帰って一人でのんびりとしていたら、玄関を強く叩かれた。なんだか急いでいるようで、扉を開けてみたらそこにアズールが立っていた。アズールは息を切らしており、服も寮服を身にまとっている。モストロ・ラウンジを抜けてきたのだろうか。
アズール先輩、と突然訪ねてきたことに首を傾げると、息を整えたアズールはキッとこちらを睨みつけ、押し入るようにオンボロ寮へ足を踏み入れた。
パタリと玄関が閉まった瞬間、両手で肩を掴まれて問い詰められる。
そんなアズールを夜月は戸惑いながら見上げた。
「えっと、あの・・・・・・」
「あなた、カリムさんやジャミルさんにキスされたそうですね」
「え。な、なんでそれを・・・・・・」
「向こうから言って来たんですよ」
ドキリとした。なぜアズールが知っているのかと尋ねれば、苛立った様子で二人から言って来たのだと答えられる。何故そんな事態になったのかは分からないし、尋ねられる様子でもなかった。
徐々に掴まれた両手の力が増し、骨がきしむような感覚を覚える。
俯いているせいで、アズールの表情を伺うこともできない。
「ありえない」
苛立ちを隠さない、地を這うような低い声で呟かれた。
「あんなに僕のことを振り回しておいて・・・・・・」
――僕の邪魔をして、僕の計画も全て台無しにしておいて。
「あんな言葉を僕にかけておいて・・・・・・」
――笑いかけて、僕のことをあんな風に言っておいて。
「ありえない」
掴まれたまた強い力で引っ張られ、アズールの胸元に倒れむ。そのまま行き場をなくすように片腕は腰に回され、もう片腕は後頭部に回り、強制的に視線を合わせるように上を向かされる。
見上げたアズールの瞳の奥には、めらめらと炎が揺らいでいるように見えた。
「僕をこんな風にさせた責任をとってください」
「あ、アズールせんぱ・・・・・・っん」
強引に唇を塞がれた。
言葉も息も奪い取るように塞がれる。驚いて肩を揺らして距離を取ろうと反射的に身体が動くが、腰と後頭部に回った腕に阻まれ、さらに引き寄せられる。
は、と息を吐いた。
唇は離され、肺に酸素を取り込む。
乱れた呼吸を整えようとしていると、後頭部に回っていた手は頬を撫で、添えたまま濡れた唇を親指でなぞっていく。
フッと、アズールは口端を上げた。
「絶対に僕のモノにしてみせます」
――覚悟しといてくださいね。
そっと細められた瞳から、逃げることはできなかった。
目の前のアズールは、睨むように眼光を鋭くさせてこちらに詰め寄ってきた。
日が沈んですぐの頃。オンボロ寮に帰って一人でのんびりとしていたら、玄関を強く叩かれた。なんだか急いでいるようで、扉を開けてみたらそこにアズールが立っていた。アズールは息を切らしており、服も寮服を身にまとっている。モストロ・ラウンジを抜けてきたのだろうか。
アズール先輩、と突然訪ねてきたことに首を傾げると、息を整えたアズールはキッとこちらを睨みつけ、押し入るようにオンボロ寮へ足を踏み入れた。
パタリと玄関が閉まった瞬間、両手で肩を掴まれて問い詰められる。
そんなアズールを夜月は戸惑いながら見上げた。
「えっと、あの・・・・・・」
「あなた、カリムさんやジャミルさんにキスされたそうですね」
「え。な、なんでそれを・・・・・・」
「向こうから言って来たんですよ」
ドキリとした。なぜアズールが知っているのかと尋ねれば、苛立った様子で二人から言って来たのだと答えられる。何故そんな事態になったのかは分からないし、尋ねられる様子でもなかった。
徐々に掴まれた両手の力が増し、骨がきしむような感覚を覚える。
俯いているせいで、アズールの表情を伺うこともできない。
「ありえない」
苛立ちを隠さない、地を這うような低い声で呟かれた。
「あんなに僕のことを振り回しておいて・・・・・・」
――僕の邪魔をして、僕の計画も全て台無しにしておいて。
「あんな言葉を僕にかけておいて・・・・・・」
――笑いかけて、僕のことをあんな風に言っておいて。
「ありえない」
掴まれたまた強い力で引っ張られ、アズールの胸元に倒れむ。そのまま行き場をなくすように片腕は腰に回され、もう片腕は後頭部に回り、強制的に視線を合わせるように上を向かされる。
見上げたアズールの瞳の奥には、めらめらと炎が揺らいでいるように見えた。
「僕をこんな風にさせた責任をとってください」
「あ、アズールせんぱ・・・・・・っん」
強引に唇を塞がれた。
言葉も息も奪い取るように塞がれる。驚いて肩を揺らして距離を取ろうと反射的に身体が動くが、腰と後頭部に回った腕に阻まれ、さらに引き寄せられる。
は、と息を吐いた。
唇は離され、肺に酸素を取り込む。
乱れた呼吸を整えようとしていると、後頭部に回っていた手は頬を撫で、添えたまま濡れた唇を親指でなぞっていく。
フッと、アズールは口端を上げた。
「絶対に僕のモノにしてみせます」
――覚悟しといてくださいね。
そっと細められた瞳から、逃げることはできなかった。
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