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注意
※ツノ太郎がマレウス・ドラコニアだと知っている状態
※マレウスとレオナがすごい不仲






ハッピービーンズデー当日。くじ引きで夜月は農民チームに分けられた。同じクラスのデュースとは同じチームに離れたが、エースは怪物チームに分けられた。ハッピービーンズデーのルールをバルガスから知らせられ、各自スタート地点の場所と地図を渡された。スタート地点は最初から決まっているらしい。

メモに書かれた番号を見て地図をたどってスタート地点の場所を目指す。ついたのはオンボロ寮の近くにある森だった。地図を見返したが、間違いなさそうだ。


「あ? なんだ、お前か草食動物」
「レオナさん」


スタート地点についてすぐ、ガサガサ音がした方に目を向ければダルそうにしたレオナが姿を現した。「お前、もしかして此処がスタート地点か?」と聞くレオナ。「はい。レオナさんもですか?」頷いて聞き返すと、返答はないが態度からして当たりだろう。


「レオナさんはサボると思ってました」
「体力育成は単位必須科目なんだよ。たく、面倒くせぇ」
「ああ、そういえばそうでしたね」


レオナは留年してしまっている。これ以上単位を落としてまた留年するわけにもいかないだろう。というより、レオナが留年しないようにラギーが面倒くさがるレオナを連れてきたみたいだが。
するとまたガサガサと誰かが近づいてくる音がした。最初に気づいたレオナに続き、夜月も音のした方に目を向けた。


「ん? 人の子か」
「マレウスさん」


次に姿を現したのはマレウスだった。「マレウスさんもスタート地点が此処なんですか?」首を傾げる夜月に「そうだ」とマレウスは答える。「じゃあ一緒ですね、私も此処なんです」ニコリと笑った夜月につられ、マレウスも顔をほころばす。

会話に花を咲かせる2人の姿を背後から見ていたレオナは眉間にしわを寄せ、夜月の腕を掴んで後ろに引っ張った。その反動で夜月はレオナの胸元に後ろから倒れこむ。そこでようやく、マレウスはレオナに目を向けた。


「ああ、いたのかキングスカラー」
「おいおい、お前の目は節穴だらけなのかよ」
「僕は今人の子と話している、邪魔をするな」
「先に割り込んできたのはお前の方だろ。お前の長話に付き合ってたら日が暮れちまう」


レオナとマレウスに挟まれながら頭上で火花を散らす。高身長の2人に挟まれ不穏な空気を醸し出す2人に夜月は冷や汗をかいた。この2人が不仲なのを忘れていた。するとハッピービーンズデー開始の合図である鐘の音がした。周りの人たちも動き出すだろう。


「始まったことだし、いつまでも留まっていないで一緒に移動しません?」
「は? なんで俺がコイツと一緒に動かなきゃならねぇんだ」
「それはこちらの台詞だ。僕こそお前と行動するのは遠慮したい、獣と歩く趣味はない」
「こっちこそお坊ちゃんの子守をするのはご免だ」


ふん、と2人してそっぽを向く。どうしたものかと夜月は肩を落とした。仲良くしろとは言わないが、このまま此処に留まっているわけにもいかない。夜月はうーんと頭を捻った。


「チッ、おい草食動物。こいつは置いてさっさと行くぞ」
「え」
「待て、何故人の子を連れていく。人の子は僕と共に行動する。お前ひとりで行くがいい」
「狩りも知らねぇお坊ちゃんじゃ、草食動物もすぐ捕まっちまうだろうが。なあ、草食動物?」
「え、っと」
「乱雑なお前に預ければ人の子が怪我をする。勿論、お前は僕と共に来るだろう、人の子」


絶対自分に頷くだろうと自信を持った顔で言ってくる。2人に板挟みされて胃が痛くなってきた。どっちに頷いてもバッドエンドに向かう未来しか見えない。ふぅ、と息を吐いて夜月は2人を見上げた。


「えっと、3人で行動したい・・・・・・かな」



* * *



夜月の言葉に折れ、不満げな顔をして見合わせた2人は仕方なく3人で行動することを受け入れた。夜月はこれで一安心だと息を吐きだした。

まず武器の調達をしに行こうと言ったレオナに従い、地図を見ながら武器を調達しに行く。けれどむろんそこには怪物チームが隠れ潜んでいる。だからレオナは武器を取りに来た他の農民チームを囮にし、それを追いかけていなくなった怪物チームを確認してから武器を調達した。流石、狡賢い。
無事、武器や迷彩服を入手し3人は迷彩服に着替え武器を手にした。


「ふむ、此処には豆が入ってないようだな」
「手持ちじゃ心もとないし、他の場所にとりに行きますか?」
「武器だけあっても意味ねぇからな」


今度は豆の調達をしに他の場所を目指すことになった。その間何度か怪物チームに発見されたが、マレウスとレオナの素早い対応で無事でいる。この2人が協力し合ったら最強そうだな、と基本背後で見ている夜月はそんなことを呑気に思っていた。

なんとか次の貯蔵庫にはたどり着いたものの、怪物チームが待ち伏せていてなかなか近づけない。手持ちの豆の数も底をつきかけていた。3人は草陰に身を隠していた。


「近づけないですね」
「他の奴が来る気配もねぇな」
「そろそろ人数が減ってくる頃合いだ、お互い生き残った者も少ないだろう」


先ほどのように他の人を囮にすることはできなさそうだ。一人ひとりを確実に仕留めようにも、人数的に豆の数は足りない。その時、ふと夜月はあることを思いつく。


「・・・・・・じゃあ私が囮になります」
「「待て」」


身を乗り出して立ち上がろうとしたところ、両隣から肩を掴まれ引き戻される。


「お前じゃ囮にすらならねぇよ」
「人の子が囮になる必要はない。囮は獣の役目だ」
「テメェ、そのでけぇ角が邪魔なんだよ。その目立った見た目を落としに使わねぇで何に使うっていうんだよ」


草むらに隠れ、声をひそめながら2人がまた言い合いを始める。声を荒げるようなヒートアップはしないが、挟まれている身としては胃が痛い。「いや、私が囮になります。なりたいです、させてください」夜月が言い合う2人に言い放つ。「何故そんなに囮になりたがる?」不思議そうに聞き返すマレウス。夜月は目をそらしてぼそぼそと口を開いた。


「はやく・・・・・・早退したい・・・・・・」
「・・・・・・?」
「あー・・・・・・」


早く早退したい、と夜月が言う。レオナは一人納得したような声を出した。夜月は運動が苦手だ。マジフトの時もできることなら見学をしようとしていた。今回のハッピービーンズデーは体力育成の一種であるイベントだ。夜月が早退したいと言うのも納得できた。
マレウスは一人ふむ、と何かを思案するように顎に指を添えた。


「なら僕もリタイアしよう。リタイアをすれば、お前と話す時間もできる」
「え、いや」
「おい、待てよ。テメェは一人で続行してろ。俺は草食動物とリタイアして昼寝をする」
「え、単位は?」
「一定時間さえ超えてればいいんだよ」
「邪魔をするな、キングスカラー。人の子は僕と過ごすと言っている」
「俺と居るっつってんだろ」


リタイアをするのは自分だけでいいのに。そもそも一緒にいるとも言っていない。勝手にリタイア後の予定まで決められている。本来の豆を回収するための囮役が、いつのまにかリタイアを目的に代わってしまった。

結局、ヒートアップした2人の声により怪物チームには見つかり、3人仲良く怪物チームに捕縛されることになった。捕まった農民や怪物チームの集合場所に向かった後も、レオナとマレウスは夜月を挟んで言い合いを続けていたのは、言うまでもない。その時、はたから見ていたラギーには苦笑されとリリアには腹を抱えて笑われた。





イベントのハッピービーンズデーのIF。もしもスタート地点がレオナとマレウスと一緒だったらのお話です。イベントを始めた際、怪物と農民チームに分けられたキャラクターのスチルを見た時「レオナとマレウスが同じチームじゃん・・・・・・」と妄想してしまったお話です。寮長はアズール以外農民チームでしたね(笑)。ついつい勢いで書いてしまいましたので、オチもないです。レオナとマレウスのバチバチの感じが、たまりません。