×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -





夜月はおそるおそるドアノブに手を伸ばし、ゆっくりとそれを押した。わずかに開いた扉から恥ずかしそうに覗き込み、扉の先にいる彼に視線を向けた。夜月に気づくとその人は来いと指を折り曲げて呼ぶ。夜月は恥ずかしながらそれに従い、扉を押して部屋から出てきた。

「ほう・・・・・・」部屋から出てきた夜月を見て、クルーウェルは目を細めた。視線の先にいる夜月は恥ずかしそうに服の裾を掴んで立ち竦んでいる。その様子にフッと笑う。「カム」立ち竦んだ夜月を呼び、クルーウェルは指さした椅子に座らせた。言われたとおりに夜月は椅子に腰を下ろす。クルーウェルはその手にメイク道具や髪飾りなどをもって歩み寄り、夜月に施しはじめた。

なぜこんなことになったのかは、数時間前に遡る。期末テストで良い点数を収めた夜月にクルーウェルはご褒美をやろうと告げていた。オクタヴィネル寮での事件も落ち着いたころ、クルーウェルはタイミングを見計らって夜月に「放課後、俺の部屋に来い。この間のご褒美をやろう」と伝えた。

言われた通り放課後クルーウェルの部屋に夜月は尋ねた。ノックをして部屋に入るとクルーウェルは突然数個の箱を渡してきて、向こうの部屋で着替えてこいと奥の部屋に夜月を押し込んだ。訳が分からず目を丸くしたままとりあえず渡された箱を開けていくと、いかにも高級そうな服や靴そしてアクセサリーまで入っていた。唖然としながらも、夜月はクルーウェルに言われた通りいそいそと服を着替えた。

そして今に至る。

髪型をセットアップし、クルーウェルは夜月にメイクを施す。それが終わると夜月を姿見鏡の前に立たせた。鏡に映る普段とは違う自分の姿を見て、夜月は感嘆の声を上げた。まるで別人みたいだ。お洒落なんてあまりしたことのない夜月は大喜びをした。


「いい女になったじゃないか」


「我ながらいい出来だ」指で顎を掬い取って視線を合わせる。自分好みの服、色、髪型、化粧。それらすべてで包み込んだ夜月を見下ろし、クルーウェルは満足そうに笑った。


「ご褒美の感想はどうだ?」
「とっても素敵です。ありがとうございます!」


笑顔で答える夜月。「でも、これ高いんじゃ・・・・・・」自分が身に着けたものを見下ろして夜月が控えめに言う。「身だしなみを整えるのは飼い主の役目だからな」お前が気にすることではないとクルーウェルは続ける。


「それはお前にやる。女らしい服も持っていないだろう」
「嬉しいです。ありがとうございます」


男子校の中に身を置いている以上、女性らしい姿は控えないといけない。一文無しで衣食住を提供されている身として、余計なものにお金を使うわけにもいかない。夜月はクルーウェルの好意に甘え、素直にそれを受け取ることにした。テストで良い点数を取っただけでこんなご褒美を得られるなんて。優しい人だと夜月は思う。


「今度はお前にご褒美を選ばせてやる、何にするか考えておけ」
「あ、なら一つ、お願いがあるんですけど・・・・・・」


自分の指を触れながらもじもじと遠慮がちに、そして少し恥じらいながら夜月は言う。その発言に、クルーウェルは目を丸くした。



* * *



「Good girl! よくできたな仔犬」


補習をしていた夜月にクルーウェルはそういって頭を撫でた。片手には完成させた魔法薬の瓶を持っていた。

「よく頑張った仔犬にはご褒美をやらないとなあ」今回の補習の他にも、授業や小テストでも夜月は良い成績を収めていた。クルーウェルはそれを誉め、褒美をやると言った。「・・・・・・で、ご褒美は以前の"アレ"でいいのか」瓶を机に置き、夜月に向き直る。「はい」夜月は少し恥ずかし気に頷いた。それを確認し、クルーウェルはおもむろに両腕を広げ「カム」と呼びかける。それを合図に、夜月は目を輝かせてクルーウェルの腕の中に飛び込んだ。


「まさか、ハグを要求されるとは思わなかったぞ」


「他に何かなかったのか」と呆れるクルーウェルに「一回、このコートに包まれてみたかったので」と嬉しそうな声音で答える。やれやれと息を吐きながら夜月の背中に腕をまわしコートで包み込むように抱きしめ、頭を撫でる。

綺麗なドレスや靴やアクセサリーでもなく、品質のいい化粧や香水なのでもなく。小さい子供にするような抱擁などを好む。腕の中で嬉しそうに堪能する夜月を見下ろし、フッと息を零した。


「まだまだ仔犬だな」


大人にはまだ早い、小さな可愛い可愛い仔犬だ。





C3のクルーウェルからのご褒美の話です。本編で回収したかったんですけど、あの3日間は大忙しだったため回収できるタイミングがありませんでした。クルーウェルからのご褒美は凄く考えました。一緒にお茶したり良いかなと思ったけど、それはなんだか味気ないし。本当は首輪のプレゼントだったけど、いやまだ早いな。もう少し好感度をMAXにしてからだなと没になりました。いつか書きたいです。その時は独占欲がカンストしてる気がします。