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数日前、夜月が女だということが判明した。ジャックのような獣人は初対面で気づいていたらしいが、やはり臭覚などが敏感だから気づくのだろう。クローバー先輩やダイヤモンド先輩も気づいていたみたいだったが・・・・・・ローズハート寮長は気づいていなかったし。エースも僕と同じ反応をしていたし、少し安心した。しかしどうして安心したのか、自分でもよくわからなかった。

あれ以来、夜月のことが無駄に目について離れなかった。今まで男だと思っていた分、女子と知ってから無駄に意識してしまって、思うように会話もできず目も合わせられない状態だった。
自分はこんな状態なのに、エースは特にそれほど気にしていないように見える。普段通りの態度を夜月に向けられていて、それが少し・・・・・・いやかなり羨ましかった。なんでこうも僕は意識してしまうんだ!と、毎回悔しさで机をたたく。

それから無意識に夜月を目で追うようになった。最初は自分でも気づかなかったが、エースに揶揄われてやっと気づいた。そして今日もデュースは夜月を目で追っていた。

授業中、隣に座る夜月をデュースはぼんやりと見つめていた。小さくて細い指でペンを走らせている。前から小柄で華奢な身体をしてるなとは思っていた。だが女子なら当たり前か、それなら妙に可愛いと思ったのも当然かと一人納得する。

夜月は女の子だ。女は小さくて弱いから男が守らないといけないと思ってる。でも夜月は、それとはどこか違う。魔法も使えないし運動もできないし力もないから弱いことには変わりないが、普通の女子とは違う。度胸があるし肝が据わってるし、夜月の作戦や指示に助けられたことも多い。自分よりも強い相手をよく見極め真っ直ぐと立ち向かう姿が好きだし夜月を見直した一面でもある。

だからこそ、早く気づいてやれればよかったと思う。

魔法も使えないのにこの学園に迷い込んできて、帰る場所もない。男しかいない男子校の中、性別を隠して1人過ごすのは大変だったろうし不安だっただろう。無暗に口外することもできないから、捌け口もない。友達として、夜月が頼れる存在としてもっと早く気づいてやれれば・・・・・・その時、バチっと夜月と目が合った。


「(あッ、また無意識に・・・・・・っ!!)」


また無意識に見てしまっていた。見過ぎて不快に思わせたか、と思いながら目をそらすこともできず硬直したまましばらく見つめあっていた。すると夜月は微笑んで「なに?」と聞くように首をコテンと傾げた。それが可愛くて、デュースはガタガタ音を立てて盛大に椅子から滑り落ちた。


「うおっ!?」
「え、デュース!?」
「ステイ! 駄犬、うるさいぞ!」
「〜〜〜〜っ!」


床に滑り落ちたまま真っ赤な顔を両手で覆う。だから!なんでこうも意識するんだ僕は!!真っ赤な顔をして悶えながらデュースは心の中で叫んだ。

結局あの後先生には怒られ、夜月には心配された。大丈夫だと言い張るデュースを心配しながらも、とりあえず昼休みだし大食堂に行こうと足を踏み出した。前を歩く夜月とグリムを眺めながら付いて行くと「お前、夜月のこと意識しすぎじゃね?」とエースに揶揄われる。「う、うるさいっ!」ほのかにまだ赤い顔でデュースはエースに怒鳴った。

こんな事態は一度では済まず、デュースは何度かやらかした。無意識に目で追って自分の手元が疎かになるし、人の話が耳に入らなくなるし。いざ夜月と話すと挙動不審になって視線も合わせられず、少し手が触れただけでビクッとするし。その様子を見てエースは呆れた顔をするし、リドルやトレイやケイトにも苦笑を零される。そしてその様子は夜月にも目についていた。


「デュース、あんまり私が女だってこと気にしなくていいからね」


あまりのデュースの挙動不審が目につき、とうとう夜月はそんなことをデュースに言った。「す、すまない・・・・・・!」いまだに目を合わせられないが、気遣わしてしまったとデュースは謝る。「ううん、もとはと言えば隠してた私のせいだからね」夜月はごめんねと眉尻を下げて言う。「今まで通り、私のことは男だと思ってくれていいから」


「前みたいに話せないのは、少し寂しいからね」


困ったように笑って言う夜月をみて、デュースは目を見張った。

僕は今まで何をしていたんだ。夜月にこんなことまで言わせて、僕は馬鹿だ。これからは事情を知る夜月が頼れる存在として、負担にならないよう助けてやらないといけないのに。友達として助け合っていくべきなのに、僕は・・・・・・!デュースは今までの自分の行動を後悔した。故意でしていたわけではないが、それでも友達を気づつけてしまったことには変わりない。


「ヨヅキ!」


意を決してデュースはガシッと夜月の肩を両手でつかんで向き直った。今まで逸らしていた視線を真っ直ぐと向ける。「今まですまなかった!」デュースは頭を下げた。「お前が男でも女でも関係ない! どっちでもお前であることには変わりない!」デュースは続ける。「だから! えっと・・・・・・」何といえばいい。何手伝えればいい。目を泳がせて考えるデュースを見て、夜月はフフッと笑った。


「ありがとう、デュース」


「これからも友達でいてね」いつもみたいに笑った夜月が嬉しくてデュースも自然と笑顔になった。「ああ、僕たちはマブダチだ!」胸を張って告げるデュースに、夜月はまた笑みを零した。いままでの緊張は何だったのかと思うぐらい、いつも通りのデュースに戻っていた。「これからは僕にできることがあれば何でも言ってくれ、力になる」そういったデュースに夜月はありがとうと微笑んだ。それを見て胸がキュッとなった。

そうだ。これからは僕たちが夜月の力になるんだ。夜月が負担にならないように、不安にならないように。いつもみたいにこうやって、笑っていてくれるように。デュースは目元をやわらげ嬉しそうに笑った。

後日、いつも通りの様子を取り戻したデュースにハーツラビュル寮の保護者たちは安堵の息を零した。けれど過保護さが急上昇し、どこに行っても夜月の後を付いて行くデュースの姿がしばらく目撃された。





C2後C3前の女の子だと判明した後の話です。前回はエースだったので今回はデュースのターン。デュースは素直で単純なアホの子なので、ピュアッピュアにしたかった。そしてエースと同じく思春期真っ盛りの男子高校生。きっと彼はむっつりです。デュースは本編C1後半で主人公にドキッとしていたし単純なのでエースよりは主人公への好感度が高め。無意識にエースに嫉妬してるけど純粋だから気づかない。デュースは多分エースを引き金に恋を自覚しそうなイメージです。デュースは主人公のことをマブダチだと思っているし現状維持が一番良いと思ってる。友達をやめるときは絶対エースが抜け駆けしたとき。絶対にエーデュースはセットだ。どっちもお互いに刺激しあってる2人が好きです。