×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -





「こんにちは、ヴィル先輩」
「あら、いらっしゃいヨヅキ」


用事を終えた後、ポムフィオーレ寮のレッスンルームを覗く。レッスンルームでは変わらずヴィルの猛特訓を受ける3人の姿があった。向こうではカリムとジャミルがダンスの練習をし、向こうではヴィルに睨まれながら花瓶を乗せて歩くレオナがいる。

「はい、じゃあ10分間休憩しなさい」ヴィルにそう言われれば3人はピタリと動きを止める。ヴィルはそのまま少し用事があるからと言って部屋を後にした。すると、練習にうんざりしたレオナがズカズカと歩み寄ってくる。


「おい、そこに座れ」
「え」
「いいから座れ」


夜月は目を丸くしたまま、言われた通りレッスンルームの床に座り込んだ。頭にハテナを浮かべていると、レオナもそのまま腰を下ろして夜月の膝に頭を乗せ、眠る体勢に入った。お腹周りに腕をまわし、尻尾はするすると腕に絡みついた。「俺は寝る、起こすんじゃねぇぞ」それだけ言うとレオナはすぐさま寝息を立て始めた。

動くこともできず、夜月は床に座り込んでレオナの枕になった。行き場をなくした手は自然とレオナの頭や耳を撫でる。するとそれを発見したカリムとジャミルがやってくる。


「よう、ヨヅキ! レオナは寝ちまったのか? 練習大変だもんなあ」
「すっかり枕代わりにされてるな」


夜月は「温かいので割と苦じゃないんですよ」とレオナを見下ろす2人に言う。
カリムとジャミルも夜月の両隣に腰を下ろし、休憩する。「練習はどうですか?」と聞けば「まあまあだな」とジャミルが答える。「たまにオレがミスしちまうんだよなあ」ダンスに夢中になりすぎると余計な動きをしてしまうカリムは困ったように笑って答える。

10分休憩は案外短い。雑談をしているとあっという間に時間はやってきて、席を外していたヴィルも戻ってくる。きっかり10分が過ぎ去ればヴィルの声が響き、カリムとジャミルは早々に練習へ戻っていく。一方、レオナはまだ眠りの中で夜月の膝の上から動こうとしない。


「レオナ、もう休憩時間は過ぎてるのよ。さっさと起きなさい!」
「いってぇッ! チッ、もう少し寝かせろよ」
「ちゃんとできるようになってから文句を言いなさい」


舌打ちをして、レオナは渋々ヴィルに連れられ再び練習に戻っていく。その姿に苦笑を零して見送る。

ヴィルはレオナに付きっ切りになるため、夜月にカリムとジャミルのダンスを見るように頼んだ。元々ダンスが得意なこともあり、口出しすることは無い。2人の息が合うようになれば完成なのだ。夜月はヴィルに言われた通り、外からカリムとジャミルのダンスを見ていた。


「ヨヅキ! 今の見てたか、どうだった?」
「凄いです! 本当にダンスが得意なんですね」
「あっはっは! 褒められると嬉しいな!」
「タイミングはどうだった?」
「完璧です。息ぴったりでしたよ」


ダンスの合間にちょくちょく夜月の元へ行って、今のはどうだったか、タイミングはどうだったか、2人は随時確認しに行った。夜月は全身を使った切れのいい2人のダンスに圧倒され、思わず感嘆もこぼしていた。

こまめに短い休憩を設けて練習を続けていると、突然カリムが「ヨヅキも踊ってみようぜ! フォークダンスなんてどうだ?」と言い出した。夜月はダンスをした経験もなく、首を横に振ったが「大丈夫だって、オレがリードしてやるからさ!」と夜月の手を引っ張っていく。後ろではジャミルのため息が聞こえた。

カリムの手に引かれるがまま、夜月はおぼつかない足でステップを踏んだ。ぐるぐる動くカリムに付いて行くのが精いっぱいで、戸惑いながら足を踏まないように気を付ける。楽しそうに笑顔を浮かべてステップを踏む目の前のカリムを見ていると、自分もだんだんと愉しくなっていき、いつの間にか夜月も楽しそうに笑顔を浮かべていた。


「じゃあ交代だな、ジャミル!」


すると、反対側の手をパシリと掴まれた。顔を向けると笑みを浮かべてるジャミルが夜月の手を取っていた。カリムはそっと夜月から手を放し、ジャミルと交代する。

「楽な姿勢でいろ、次は俺がリードする」ジャミルはグッと夜月の腰を引き寄せて距離を縮めた。ジャミルのリードはカリムとは違ってゆっくりとしていて、#name#を気遣うような動きだった。ゆるやかなリードに引かれ、夜月も安心してステップを踏んだ。


「君は筋が良い、これくらいならすぐに習得できるだろう」
「今度ウチで宴をした時にでもまた踊ろうぜ! 熱砂の国のドレスも用意するか!」
「それは良いな、いくつか用意しておこう」


「熱砂の国のドレスかぁ・・・・・・少し興味ありますね」伝統ドレスと言うものだろう。頭で想像しつつ、そんなことを零せば「決まりだな!」とカリムは頷く。珍しくジャミルも賛成している。

それからしばらく3人でダンスを楽しみつつ、フェアリーガラの練習に励んだ。