×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -





背を向け瞼を閉じてからしばらく経つと、隣から規則正しい寝息が聞こえてきた。首だけ動かして背後を盗み見れば、夜月は目を閉じて眠っていた。スヤスヤと心地よさそうに寝息を立てる夜月。エースは向き合うように体勢を変え、肘をついて見下ろした。


「(ほんと、女みたいな顔してんなぁ・・・・・・)」


眠っている夜月を眺めながら思う。
最初に見た時から思っていた。身長も低いし身体も小さい。華奢で筋肉なんてついてなさそうな細い手足。肌も白くて綺麗だし、とにかくひとつひとつのパーツが小さい。見た目の話だけじゃなく、仕草や話し方だってそうだ。これで女じゃないなんて、世の中どうなっているんだか。


「(あ・・・・・・こいつ、まつ毛も長え・・・・・・)」


心地よさそうに眠る夜月に悪戯心がわいて、人差し指でツンツンと頬をつつく。頬っぺたは柔らかくてふにふにしていた。これで男とか、ホントないわー・・・・・・エースは思わずため息をついた。悪戯をした手を引っ込め、改めてエースは夜月をじっと見つめた。

正直、凄い奴だと思った。魔法も使えない奴だと馬鹿にしたけど、魔法が使えないだけ。こいつには作戦能力と指示能力があった。そのおかげで、あのデカい怪物を倒して魔法石を手に入れ退学は免れた。夜月はそれを学園長に認められ、前代未聞の魔法の使えない生徒として入学を果たした。見た目に反して肝が据わっているというか、思ってたより面白い奴だ。


「(・・・・・・にしても、こいつよく寝てんなあ)」


そりゃあんな目に遭えば疲れるか。しかも入学式で大騒ぎもあったし、疲労はたまるか。ツンツンと今度は眉間をつつく。すると寝心地が悪くなったのか夜月はキュッと目をつむった。表情の変化を見てエースは悪戯っぽくフッとニヤけた。悪戯を続けてると「んぅ・・・・・・」と唸ってもぞもぞと動き出した。


「(やば・・・・・・っ)」


流石に起きたかと思いサッと手を引っ込め、夜月を盗み見る。夜月はもぞもぞと寝返りを打っただけで、起きることはなかった。エースははぁと息を吐く。悪戯しても起きないなんて、相当疲れてんだなあ。身じろいだことで布団がはけ、ぶかぶかの寝間着も若干脱げた。世話が焼けんなあと思いながら親切で夜月にかかった布団をかけなおそうと手を伸ばした時、ふと夜月の胸元が目に入った。


「・・・・・・・・・・・・は」


思わず声を出し、伸ばした手は止まった。エースは目を見張ったまま固まった。視線の先は夜月の胸元。そこがふっくらと膨らんでいて、溝のようなものが目に入った。むね・・・・・・エースの頭の中にその文字が浮かび上がった。いやいやいや!そんなはずはない!ここは男子校だぞ!頭に浮かび上がった考えを振り払うようにブンブンと頭を左右に振る。そして見てはいけないものを盗み見るかのように、おそるおそるに再び夜月に視線を向けた。何度見ても、谷間のように見える。いや、というかもうそれにしか見えない。


「(いや・・・・・・! こいつは男だ、男のはずだ)」


きっと影や大きいサイズの寝間着のせいでそう見えるだけだ。入学式で女の子と思って声をかけた結果、男だった奴がいた。夜月もその類に違いない。男子校だし。容姿が女に見えるだけで、生物学上男のはずだ。男子校だし。それに、女だったら流石に同じベッド使わせないだろうし・・・・・・いや、でも渋ってたな。でも男同士でも嫌だろうし。エースは上半身を起こして頭を抱えながら悶々と考えていた。


「・・・・・・男、だよな・・・・・・?」


寝ているから聞いていないだろうし返答も帰ってこないと分かっていて、エースは夜月を見下ろしてそんなことを零す。

以降エースは寝るに寝れなくて早起きをする羽目になり、夜月を観察するもどちらだか結局分からず、本人にどっちなんだと聞く勇気もあるはずなく。悶々とした疑問を頭の隅に追いやりいつも通りに過ごした結果、後日女だという事実を知らされた。





Chapter1の9話の補足でエース視点です。どうやってみんなに主人公が女だと気づかせようと考えた結果、本編のようにハーツラビュル寮は人伝でという形になりましたが、いくつかパターンを考えてまして。エースとデュースはラッキースケベ率が高そうだしそっちもいいかなと思ったんですけど、ラッキースケベを2連発するのもアレだし。エーデュースには優劣無く同時に知ってほしい願望があったので本編のようになりました。ラッキースケベはアズールに任せました(笑)。エースは勘が鋭いし器用なので若干気づくなあと思い「女っぽいと思うけど男だろうしでもなぁ・・・・・・」みたいな曖昧に実は思ってたよ、ってことにしました。本編でデュースは主人公にドキッとした場面があったけどエースにはなかったからね。エーデュースには男と認識しながら主人公にドキッとしてほしい。