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「――――といわけで、今からヨヅキさんに贈るベッドのプレゼンテーションを1人持ち時間3分程度で行いたいと思います」


一体なぜこんなことになってしまったのだろう・・・・・・。

原因は昨日の朝に遡る。

夜、少し部屋を後にしている間に、泊りに来たエースとデュースとグリムが何かで揉めたらしく、派手に喧嘩を繰り広げていたら、運悪く使っているベッドに直撃し、ベッドが半壊してしまった。他の部屋に置いてあるベッドは壊れていて、使えるものは無い。困り果て、流石に怒ってリドルに伝えれば、案の定3人は首輪をつけられた。

それで反省しているようだったため、もう気にしていないのだが、リドルは自分の寮生たちがおかした責任があると言って、新しくベッドを新調してくれると提案した。悪いと思ったが、ベッドがないのも辛く、ここは甘えることにした。

それでことが片付くはずだったのだが、それを聞きつけたアズールが突然参戦。リドルと言い合いをしていれば、そこにカリムが来て、事態はさらに広がり、なぜか寮長全員の耳に届くことになった。関係ないはずなのに、全員が「自分がベッドを選ぶ」と言い出し、誰も譲らないため、後日プレゼンテーションを行うことになった。それがいまである。

「では、誰から行いますか?」率先して司会をするアズールが見渡す。「なら、ボクからさせてもらうよ」真っ先にリドルが挙手し、椅子から腰を上げた。「ボクが選んだのはコレだ」すると、タブレットで参加しているイデアによって、ベッドの画像が映し出される。


「サイズはシングル、1人分には十分な広さを有している。使用している素材も上質で、マットや枕、布団も比較的柔らかい素材だ。それと、キミの部屋は寒色系の質素な色合いだからね。色が与える影響も鑑みて、暖色系にしたよ」


リドルが選んだベッドは、赤を基調とした白と黒のベッドだった。赤いカーテンのついた天蓋付きのベッドで、派手だが可愛い印象のベッドだ。ハーツラビュル寮の印象も受けられるデザインで、リドルらしい。

「わあ、可愛いですね」遊び心のあるデザインに、#name#は素直にそういった。「気に入ってもらえたのならよかったよ」夜月の反応を見て、リドルもニコリと口端を上げる。


「うわー、自分の寮アピール半端ないですわー」

「ム・・・・・・文句を言うなら、次はあなたが紹介したらどうです?」

「え。ぼ、僕?」

「口出しをしたのなら責任を取るべきです」

「わ、わかったよ・・・・・・」


強気なリドルに言われ、若干押されぎみになりながらイデアは頷く。ふよふよ浮いたタブレットから「僕のは、これ・・・・・・」と言って、次の画像を映し出す。

イデアが選んだベッドは、シンプルそのものだった。装飾などは一切なく、ごく普通なベッド。特徴はランプが付属していることと引き出しが多く見受けられる部分だ。


「シンプルなシングルベッドだよ。でもベッドの下には2つ引き出しがあって、頭のほうにも小さいのが2つ付いてる。ランプをつけられて、コンセントも付属してる」


「本とか読むので、ランプがついているのは良いですね」夜に本を読むことがある夜月にとって、ランプはありがたい。「ほ、ほんと?」肯定されて、タブレットから少し声のトーンのあがった声色で、イデアは少し嬉しそうに言った。「便利さを追求する辺りがイデアさんらしいですね」画像を見て、ふとアズールが呟く。

「お次は僕が行かせてもらいます。どうぞご覧ください」イデアと交代し、また新しい画像が映し出される。

アズール選んだベッドは、全体的に白いもの。真白で頭の部分に垂れる天蓋のレースが、なんだか絵本のお姫様のようなベッドだった。形も特徴的で、四角ではなく、丸い楕円の形をしており、装飾は可愛らしい貝殻であしらわれていた。


「安眠のためには十分な広さや快適さが必要です。クイーンベッドならある程度の広さを有しているため、寝返りの際にも安心です。肌触りの良い軽い素材を使っているので、まるでクッションに包まれているような寝心地ですよ」


「なんだかお姫様ベッドみたいですね」綺麗なベッドに見惚れて感想を述べれば、「お気に召しましたか?」とアズールは自慢げに微笑んだ。


「貝殻のモチーフ・・・・・・」

「アズール氏も大概ですわー」

「ふん、下心が丸見えだね」

「ぐっ、リドルさんには言われたくありません。それに、このブランドは女性に人気なモノなんです。余計な詮索はやめてください」


どうやらしっかりと下調べをしたようだ。なんともアズールらしい。「ふん、どれもこれもダメね。なってないわ」すると、黙って彼らのを見ていたヴィルが声を上げた。「アタシのを見なさい」そういって腰を上げ、タブレットのイデアに指示を出せば、次の画像が現れる。


「骨組みは焦げ茶の木製、マットや枕は白、布団や天蓋は緑で整えた、ナチュラルなデザインよ。ベッドも家具の一つ、部屋の色調やデザインに合わせないと美しくないわ。使っている素材も申し分ない一流ものよ。広さに関してはアズールと同じ意見ね、だからクイーンベッドにしたわ」


ヴィルの言う通り、そのベッドは以前のベッドと似たデザインをしていた。このベッドを部屋においても、違和感は感じなさそうだ。色合いなどははっきり言って地味だが、それを地味だと感じさせないデザインが、ヴィルらしい。

「確かに、部屋の雰囲気にも合ってて良いですね」ヴィルの言葉に納得すれば「このアタシが選んだのよ、間違いないわ」当たり前でしょ、とヴィルはフッと笑う。

「どいつもこいつも、ごちゃごちゃしてやがんな」ぼんやりと見ていたレオナが呟く。「なら次はアンタのを見せなさい」ヴィルはそういってレオナを急かすと「面倒だな・・・・・・おい」といって、イデアに画像を出させた。


「ごちゃごちゃしてると邪魔くせぇからな、装飾は最低限だ。広ければそれだけ良いし、サイズはキングサイズだ」


イデアのものと似ていて、こちらもシンプルなデザインをしている。リドル、アズール、ヴィルとは違って天蓋をつけていないところもレオナらしい。装飾は最低限と言う通り、飾りは木製部分にはめ込まれたいくつかの宝石ぐらいだった。

「レオナさんの部屋のベッドに似てますね」なんだかそんな印象を受けた。「ベッドなんて寝れればどれも一緒だろ」眠れればいい、という意見はまさに昼寝好きのレオナらしかった。


「ふむ。しかし、これでは質素すぎるのではないか?」

「あ?」

「人の子は女性であるのだから、質素すぎるのは良くない。それに、あの屋敷は脆く穴だらけだからな。毎夜眠る寝台ぐらい、丈夫にしなければ」


マレウスがレオナに口出しすれば、レオナはキッとマレウスを睨む。それを気にせず「シュラウド」と言って、画像を出せと促す。「あー、はいはい」と愚痴をこぼして、イデアはそそくさと画像を移した。


「僕が選んだのはこれだ。眠りへ誘うのにも、暗色が好ましい。天蓋付きのレースはカーテン代わりになり、黒だから透けにくい。勿論、質についても問題はない」


マレウスが選んだベッドは、全体的に黒い。黒を基調に整えてあり、細部にひっそりと黄緑色の装飾がされている、大人っぽいデザインだ。アズールの選んだベッドと対照的な印象を受ける。

「うーん、確かに暗い色のほうが眠りやすくはあるかも・・・・・・」マレウスの言葉を素直に受け入れて首を傾げる。「フ、そうだろう。人の子にはこれがよく似合う」マレウスは満足そうに自分の選んだベッドを勧めた。


「チッ。黒に緑なんて下心が見えついてんだよ、そんなベッドで寝かせられるか」

「貴様の方こそ、自分の色の宝石をはめ込んでいるではないか。文句を言われる筋合いはない」


レオナとマレウスはそういって、お互いを睨んで火花を散らし合っている。「自分の瞳の色をした宝石をあしらう時点で、お二人ともどうかと思いますが・・・・・・」2人のデザインを見たアズールが眼鏡を押し上げる。「やはり王子は違いますなー」はは、とタブレットの向こうから乾いた笑みが届く。

「おお! みんなの選んだベッドもいいな!」すると、カリムの元気な声が響いた。「じゃあ、最後にオレだな。オレが選んだのはこれだ!」最後にカリムが選んだベッドが映し出される。

カリムが選んだベッドは、豪華絢爛の一言が似合うベッドだった。臙脂色を基調としていて、天蓋をついており、宝石の装飾は勿論という、流石は富豪というなんとも高そうなベッドだった。スカラビア寮に置いてあったベッドも豪華だったが、それ以上に豪華なベッドだ。


「熱砂の国でも有名な家具屋で、オレんちの家具なんかも此処のを使ってるんだ! 気に入らないところがあればオーダーメイドもできるし、素材も一級品、使い心地も良いんだぜ!」


ニコニコとカリムは良心に勧める。「凄く寝心地よさそうだけど、大きい・・・・・・」カリムの言う通り寝心地は良さそうだが、このベッドは縦にも横にも大きかった。「そうか? 普通だと思うぜ?」しかしカリムは不思議そうに首を傾げる。

「アンタのは大きすぎるのよ、ベッドしか置けないじゃない」ヴィルがそういえば、カリムは悩むそぶりを見せ「それは困るか・・・・・・じゃあ一緒にオンボロ寮も改築するか!」と満面の笑みを浮かべる。規格外のカリムに数名はため息をついた。


「そもそもアンタたちねぇ。クイーンサイズならまだしも、キングサイズなんて大きすぎるのよ。そんな大きさはいらないでしょ」

「あ? 俺が入ったら狭いだろ」

「「「「は?」」」」


ヴィルの真っ当な意見に、レオナがさも当たり前のように答える。その返答に、キングサイズを選ばなかった4人はポカンと口を開けて彼らを見詰めた。


「そうだな。人の子はともかく、僕は大きいからな。狭すぎては人の子も窮屈だろう」

「狭いベッドじゃ寝れねぇからな」

「やっぱり2人で寝ても十分な広さがあるほうが良いよなあ!」


さも当たり前のように、一緒に寝ることを前提とした言葉を言い放つ3人。そんな3人を目の前に、思わず全員が言葉をなくした。


「っな・・・・・・なにを言っているんだキミたちはっ!? 不純だっ!!」

「い、いい一緒に寝るためのベッドを選んでいたなんてっ・・・・・・破廉恥ですっ!!」


リドルとアズールはわなわなと震え、顔を真っ赤に染めて怒鳴る。ヴィルに至っては「ホント、アンタたちは・・・・・・はぁ」と、やれやれというようにため息をつき、イデアは「うわぁ・・・・・・」と若干引いたような声を出した。


「え、っと・・・・・・・・・・・・」


「人の子は僕が選んだベッドで眠ってくれるだろう?」すかさずマレウスはそういって#name#に詰め寄る。
「お前好みのベッドを作らせるぜ?」良心で伝えるカリムは笑顔で言う。
「何でもいいが、トカゲ野郎のはやめろ。あとキングサイズは絶対だ」ベッドで寝る気満々なレオナは広いものを選べと強要する。
「そ、そんな貴方たちのベッドで寝かせられるわけないでしょう!? 僕のが一番良いです!」そんな3人に反抗し、アズールは強気に訴える。
「そもそも事の発端はボクの寮生たちだ! 責任はやはりボクが取る!」もっともな意見をリドルは掲げる。
「アタシのが一番美しく理に適っていると思うけど、アンタのベッドなんだからアンタが決めなさい」自分のを勧めつつ、最後は本人に選ばせようとするヴィル。
「これ、僕が一番便利で下心も一切ない普通なベッドを選んでいるのでは?」もはや自分の世界に入ったイデアはボソボソとそんなことを呟いた。


「・・・・・・・・・・・・」


結局、誰のものを選んでも新たな火種になりそうで、夜月は学園長に頼んで同じベッドを購入してもらうことになった。




お題箱からもらったお題です。
寮長たちのバトル・ロワイアル(?)を頂いて、うわー凄い面白そう!と思いました(笑)。寮長たちが自分こそ一番!という姿勢で挑んでいく感じが大好きです。全員独占欲と強引さがあって良いと思います。まあ、今回イデアはそんな感じをさせられなかったんですが・・・・・・またバトル・ロワイアル書きたいですね。今回はベッド編でしたので、次はなんでしょう?1年生組でさせるのも面白そうですね。