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026


オンボロ寮を返してもらった夜月は3日間泊めてくれたレオナたちにお礼を告げ、寮に戻ってきていた。オンボロ寮はこちらの世界での我が家に近い。取り戻せてよかったと、寮を見て思う。


「・・・・・・おや、戻ったのか」
「こんばんわ、ツノ太郎」


寮の前にはツノ太郎がいた「まさかアーシェングロットとの勝負に勝利するとは」戻ってきた夜月を見てツノ太郎はそう零す。「ボンヤリとしていそうに見えて、お前もなかなか曲者らしい」フフッと笑う。


「ツノ太郎のアドバイスのおかげだよ。ガーゴイルがいいヒントになったんだ」
「僕の?」


「・・・・・・別に助言したつもりはなかったんだがな」指で顎を挟みながら言う。「ふふ。なんにせよ、この庭が騒がしくならずに済んでよかった。すまし顔のアーシェングロットが悔しがる顔はさぞ見ものだっただろう、僕も見てみたかった」ニヤッとした顔で言うツノ太郎。意地の悪い顔だ。


「もしよかったら、また一緒にお話でもどうかな?」
「僕とか?」


目を丸くしたツノ太郎に頷く。「うん、いろいろと物知りみたいで話してて楽しいんだ」他にもいろいろ知っているだろうと思い、夜月はそんなことを言った。「それに、まだ貴方のことをよく知らないから」ツノ太郎はじっと夜月を見詰めた後、瞼を下ろして口端を上げた。「・・・・・・ふ、いいだろう。次に会った時にでも聞かせよう」


「・・・・・・ん。僕はそろそろ自分の寮へ戻ったほうが良さそうだ」
「そうだね、もう夜も遅いし」
「お前も早く寮へと戻るがいい。ではな、おやすみ」


すると光に包まれてツノ太郎は姿を消す。自分の寮に入ろうと足を進めると、遠くから2人か走ってくるのを見つけた。よくみるとマジフト大会で見たディアソムニア寮の2人だ。


「・・・・・・どうだ、いたか?」
「いや、こちらにはいらしてないようだ」
「ああ、若様・・・・・・何故、供も連れずに外出など!」


2人はそのままどこかへ向かって走り去ってしまった。口ぶりからして、誰かを探しているのだろう。夜月は止めていた足を動かし、3日ぶりの寮に足を踏み入れる。この3日間でどっと疲れた。今日は早く眠ってしまおうと風呂に入り、明かりを消してさっさとベッドに潜り込んだ。するとぼんやりと薄い光がひかりだした。


「・・・・・・ん? 鏡が、光ってる?」


起き上がって目を向けると、部屋の鏡がぼんやりと光っていた。コンコン、コンコン。鏡の向こうからノックをする音がする。「・・・・・・の・・・・・・かい」途切れ途切れの声が聞こえてくる。まるでホラー映画みたいだ。もしくは夢なのだろうか。「・・・・・・そこに、誰かいるの?」鏡に映った影はそう聞いてくる。するとぼんやりとひかる光は消え、いつも通りの鏡に戻る。


「いまのは・・・・・・」


鏡に触れてみるが、何も変わらない。ただの鏡だ。寝ぼけているのだろうか。そんな疑問を隅に追いやり、夜月は再びベッドに潜り込み瞼を下ろした。