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6


「お、たくさん拾ってきたな」


ハーツラビュル寮のキッチンに4人は大量の栗を入れたカゴをもって行く。キッチンにはトレイの姿だけで、ケイトはいなかった。それから4人は栗のタルトを作るための下準備に、まず栗を剥くところから始まった。働かざるもの食うべからず、といったところだ。4人はトレイと一緒にタルトの下準備を始める。栗の数が多いことから、そして地道な作業に夜月以外の3人はため息を落とした。

やっと下準備を終えたというとき、トレイがさも当たり前のようにオイスターソースを入れようとした。驚くエースたちに「有名なパティシエならタルトにこれを使わない奴はいないぞ」という。その言葉にまんまと騙され、デュースたちはアリかもしれないなどと頷く。「いや、流石にオイスターソースは入れないよ」夜月だけが首を横に振ってトレイの冗談に気づいた。もちろんそれは冗談で、少し考えればわかるものだ。笑うトレイに騙された3人はむっと唇を尖らせる。


「次に生クリームを・・・・・・あっ!」
「どーしたんすか?」
「何かありました?」


さて、としたところでトレイが声を上げた。不思議に思ってエースと夜月が尋ねると、どうやら生クリームが足りなくなってしまったらしい。タルトにそれはケーキにそれは死活問題だ。デュースは気前よく購買への買い出しを申し出た。ついでにトレイは卵などの買い出しを頼み、メモにそれらを書き残す。


「一人じゃ持てそうにないな、ヨヅキも手伝ってくれ」
「うん、いいよ」
「オレ様もいくんだゾ!」


デュースと夜月そしてグリムは買い出しに向かうべく、購買へと向かった。



◇ ◆ ◇



購買部は印象的な場所だった。オカルトちっくなものから何かもわからないものまでなんでもあるようなところで、少し怪しい雑貨屋さんのような雰囲気だ。グリムやデュース、夜月は思わず店内を見渡した。


「Hey! 迷える小鬼ちゃんたち、ご機嫌いかが?」


「ようこそ、Mr.Sのミステリーショップへ」購買部には褐色の肌をしたシルクハットを被る不思議な男性がいた。サムというその人は、どうやら此処、購買部の店主らしい。


「あの、このメモに書いてあるものが欲しいんですが」
「なになに? これまたSweetなラインナップだ」


デュースがトレイが書きだした買い出しリストをサムに見せる。生クリームや卵などラインナップされたそれに、サムはそう零した。サムは奥へ取ってくると一度姿を消し、リストに挙げられたそれらをすべて持って現れた。本当に此処はなんでもあるみたいだ。量も多くて重そうなそれをデュースと夜月が受け取る。するとサムは今ならお得価格で荷物運びになるものがあるなどいい、上手に商売をする。


「け、結構です! 行くぞグリム!」
「ふにゃ〜! もっと遊んで帰るぅ〜!」


断りを入れ、楽し気にあちらこちらを見るグリムをひきずってデュースはすぐさま購買部を去ろうとする。その背中に付いて行こうとしたその時、後ろから呼び止められる。


「おっと、ちょっと待ってくれるかいそこの小鬼ちゃん?」
「え、わたしですか?」


ニコニコと笑顔を向けるサムに夜月は不思議そうに首をかしげる。


「学園長から話は聞いてるよ。困ったことがあればこのサムにお任せ、なんでも取り揃えておくよ」


サムはそういってウィンクをする。どうやらクロウリーは購買部のサムにも事情を伝えているみたいだ。正直助かる、と夜月は思う。女性の必需品など此処では手に入るわけなさそうだったので、夜月は素直に「ありがとうございます、助かります」と感謝を述べた。
すると購買部の出入り口から「監督生ー!」と呼びかけるデュースに気づく。


「それでは、失礼します」
「OK、OK。またのお越し、お待ちしてマース! Bye!」


サムに一礼して、夜月は足早にデュースのもとへと向かった。