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欠損のあるニルヴァーナ



――――退屈だった。

――――この世界に色は無い。白と黒で構成された、いわば灰色の世界。
――――つまらない日々が、ただただ過ぎ去っていくのを傍観する。
――――生に執着することもなければ、死を羨望するすることもない。

――――この酷く退屈でつまらない世界で、私は死にながら生きていた。





「なあ、夜月」


結末が見え見えな本から視線を逸らし、床に座って一枚のプリントを眺めている幼馴染に視線を送る。
中学で再会した幼馴染の月永レオは、読書を中断させたにもかかわらず、こちらに視線は送らないで手に持ったプリントを眺めつづけた。


「おまえ、もう進路は決めたか?」


ベッドに寝そべりながら片手に本を持って、瞳だけレオに視線を向けていた。返事をせずに要件を待っていれば、レオは進路の話をしだす。おそらく、その手に持っているプリントは進路希望調査書などだろう。お互い、今年で中学三年生だ。高校の進路を決めなければならない時期である。


「いや、決めてないよ」


二人の視線が交わることは無く、再び本の活字に視線を戻して告げた。
自分の進路とかに対して、さして興味もなく、素っ気ない声が出る。レオは気にした様子はなく、いまだプリントを見つめていた。


「レオが決めてよ」

「え?」

「レオが行くところに行くよ。男子校なら、そこに近い高校に行くから」


はじめてレオはプリントから目を離して夜月を見た。だが夜月の視線は既に本に向けられていて、視線が交わることは無い。
ペラリ、夜月の指が本のページをめくる。

レオが好きだから、幼馴染だから一緒に居たい、とかそんな理由で言ったわけではない。レオはつまるところ、天才である。彼の作る曲は天才的に素晴らしいし、運動もできて、頭も悪いわけでもない。そしてなにより、レオの傍はわりと面白いのだ。幼さの残る性格のせいか、周りの人間を振り回すのが大の得意といえよう。

つまり、何が言いたいかというと、少しでも退屈が凌げればそれでいい。その要因が幼馴染の月永レオという存在だった。そのほかにも挙げれな理由は存在するが、一番の理由はこれである。


「・・・・・・」


夜月を見上げていた瞳が、再び手元のプリントに落ちる。
別に、夜月の言葉が予想外で驚いていたわけじゃない。なんとなく、そんな選択を取るだろうという予感はあった。

投げやりの夜月に対して、レオはほぼ進路が決まっていた。その学校は芸術系で、普通科も存在するが、自分が行きたい学科はほぼ男子校状態。しかもその学科は特別で、校舎も分かれている。正直なところ、レオも夜月と同じ高校に通いたいという思いが強かった。この学校に一緒に通ってくれるか、レオは少し不安に思っていた。


「・・・・・・じゃあ、此処なんてどうだ?」


携帯で学校のホームページを開いて、その画面を夜月に見せる。
夜月はベッドから起き上がり、本を閉じて携帯の画面を見つめた。そこには何の奇跡か、それとも偶然か、つい最近、入学の誘いのあった学校だった。


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