×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -




I'd like to have a meal together


昼休み。
授業の終わりを告げる鐘がなる。腕を伸ばして背筋を伸ばしていると、席を立ちあがった轟がいつものようにやってくる。


「瓦楽」

「ん、学食に行く?」

「あぁ」

「ん、わかった」


じゃぁ行こうか、と財布をカバンから出して席を立つ。
轟の横を通り過ぎた夜月の髪が、ふわっと轟の前で揺れた。柔らかな紙が靡き、シャンプーのいい香りが轟の鼻をくすぐる。窓から差し込んだ太陽がキラキラと夜月の髪を輝かせた。

――触りたい。

おもわず轟はふわふわと揺れるその髪に手を伸ばす。が、伸ばした瞬間夜月が振り返った。
轟は瞬時に腕を引っ込める。


「どうかしたの?」

「い、いや。なんでもねぇ……」

「そう? じゃ、行こうか」


特に気にすることなく、夜月はそう朗笑してまた歩き出す。
轟は先に言ってしまう夜月の後姿を眺め、伸ばした手を見下ろした。

自分の体の熱が上がる感覚がわかる。轟は伸ばした手で自分の胸を掴んだ。ドクドクと打つ心臓の鼓動がいつもより高い。
"それ"を自覚したせいか、かぁっと顔の熱が上がる。


「轟? 行かないの?」

「……! わ、わりぃ、今行く」


轟は慌てて夜月のもとへ駆け寄り、一緒に教室を出ていく。
その姿を眺めていた女子生徒が数名。


「やっと自覚した感じ?」

「遅かったねぇ! 中学から一緒なんでしょう? 轟君って鈍感なんだね!」

「これからどうなるんやろうなぁ〜」


芦戸、葉隠、麗日がこの語の行く末を楽しみにしながら彼らを眺めた。




学食。
上部に張られたメニューを眺めながら、今日は何にしようかと思案する。


「瓦楽は何にするんだ?」


そう問いかける轟に、夜月はんーっと声を伸ばす。
一通りメニューを眺め終える。


「今日はラーメンにでもしてみようかな」

「じゃぁ、俺もそうする」

「え?」


隣に立ち轟を思わず見てしまった。
轟は「ダメか?」と小首を傾げて聞く。すぐにそういうわけではないと伝えると、さっさとラーメンを提供している場所へ行こうとする。


「瓦楽、麺類はこっちだぞ」

「えぇ……」


轟についていき、スムーズにラーメンを受け取る。プレートを持って、さて席を探すかと辺りを見渡す。
やはり学食。なかなか空きはない。すると、いつだかのように上鳴と切島、瀬呂がこっちこっち、と手を振る。今日は爆豪はいないらしい。

有り難く相席させてもらい、轟と向き合うように座って手を合わせる。


「お、瓦楽は今日ラーメンなんだな」

「えぇ、たまにわね」


と、上鳴が。


「轟もラーメンなんだな」

「あぁ」

「珍しいな、轟は蕎麦食ってるイメージがつえーけど」

「そうか?」


と、瀬呂と切島が。
二人のプレートを覗き込みながら三人は感想を述べる。

轟はいつも蕎麦を食べている。それが彼の好物だ。
夜月は「私に合わせなくてもよかったんだよ」と、先ほど言えなかった言葉を放った。
数秒ラーメンを眺めたのち、轟が口を開く。


「別に。お前と同じもん食べたかったから、俺はこれでいい」


轟がそう言った時、ピシリと三人は思考を停止し、止まっていた。想像力豊かな上鳴を筆頭に、あれこれ考える三人。
夜月はそんな彼らに気付かず、どうして同じものを食べたいのか尋ねる。


「お前といろいろなこと共有してみてぇし、それに……同じ食卓にいるみたいで、嬉しい、から……」

「……そう、君がいいならそれでいいけど」


夜月が微笑むと、轟も嬉しそうに微笑む。あの一件以降、轟は柔らかくなり素直な面が特に出てきたと思う。

一方、はたまた三人は再びピシリと雷に打たれたように止まる。
「共有したい」と「同じ食卓にいるみたい」、それってつまり……そういう……などと思考を巡らす。


「ちょ、ちょっと待て! え、お前ら、付き合ったの……?」


ストップと上鳴がそう聞く。
二人は不思議そうに首を傾げた。


「付き合ってないわよ。どうしたのさ、いきなり」

「あぁ、まだ付き合ってない」


轟の次の言葉に、まず瀬呂が「え、まだって言った?」と。切島が「え、まだ? まだって……え?」と。最後に上鳴が「まだ!? 何それ予定あんの!?」と心の中で叫ぶ。

彼ら三人は教室にいた女子同様、轟が夜月に対して少なからず好意を持っていたのは察せていた。それが恋愛か友情か、悩む線もあったがなんだかんだ好きなのだろうと納得。
そして今の言葉で「やっと自覚したのか」と思わされる。


「あー、自覚してほしくなっかわー」

「だなー」


残念と上鳴が言い、それに同調する瀬呂。
轟と夜月は不思議そうにする。それを置いて、上鳴がニヤリと切島に言い放つ。


「ま、頑張れ切島」

「え」

「爆豪に続いて轟の強敵だけど、まぁ頑張れよ」

「お、お前らぁぁぁ!!?」


その時、上鳴と瀬呂に弄られた切島が顔を赤く染めたのは言うまでもない。