×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -




Battle training


ところ変わってビルの4階1室にて。


「尾白くん、瓦楽さん、私ちょっと本気出すわ、手袋もブーツも脱ぐわ」

「うん……」

「いいの、それ……」

「うん!」


葉隠の脱ぐ宣言に、尾白も夜月も少し抵抗を示した。しかし、本人が気にしないというならこれ以上言うこともあるまい。
尾白は核の前で待機。葉隠は同階で潜伏することになった。


「それじゃ、私は核の部屋前に待機するよ」


位置取りを確認し、いよいよ訓練が始まる。
すると、唐突にそれは現れた――建物すべてが氷漬けにされる。

足は氷によって足止めされ、尾白や葉隠に至っては裸足だ。下手に動けば皮がむける。
しかし、夜月にそれは通用しない。


「『融けろ』」


そうつぶやいた途端、夜月の周りの氷や足止めた氷は一瞬にして水へと溶けていく。
すると、夜月が予想した通り轟が一人で此処までやってきた。


「やっぱり、そう来るわよね。轟」

「お前もな、瓦楽」


お互い、戦闘態勢に入り腰をかがめる。
轟は夜月の瞳を見つめ、夜月はオッドアイの瞳を見つめ、同時に地を蹴った。

一瞬で凍らせる轟に、夜月は建物が燃えない程度の、氷を解かす程度の炎を出して応戦する。
轟が移動する場所に足止めのトラップを出現させるが、凍らせられ、なかなか決着に行かなかった。

そんな様子をモニターで見るA組。


「うわー! 夜月ちゃん凄いよ!」

「さすが夜月さん……個性の範囲も広いですわ」

「つーか、轟も瓦楽も万能すぎるだろ。チートか」


麗日、八百万、上鳴が感想を述べる。

戦闘を繰り返す二人は、どちらも一歩譲らず。
凍らしては融かしてを繰り返し、なかなか進まない。

そんな時、夜月が移動と体を動かすが足を取られ動けなかった。そこには氷。
足元の注意が薄くなっていたのだ。


「しまっ……!!」


すぐさま融かそうとするが、轟はそれを狙って夜月に向かってくる。それはもう目の前。
とっさに融かすよりも防御に出て夜月は間に結界のようなバリアを出すが、轟の鋭い氷に貫かれ、あっけなく崩れる。

同時に轟は夜月を床に押さえつけ、両手両足を凍らす。
そして、右手を夜月の額に浮かばせ動きを封じる。

夜月の個性は『想像』と『言霊』。一瞬の隙さえあればどうにでもなる。
それを封じるにはこういった、次の瞬間には死ぬという状況を作らなければならない。


「これなら、もう動けねぇだろ」


少しだけ不敵に笑った轟。
夜月は残念と笑い、息をついた。


「降参……」


手首に確保テープを巻かれ、轟は核に触れた。ヒーローチームの勝利。
核に触れた轟の左手から一瞬炎が現れ、氷がすぐさま溶けていく。
夜月の氷も融け、轟にテープを外してもらい立ち上がる。

すると、尾白と葉隠が駆け寄ってきた。
何もできなかった、と二人は述べる。


「私も氷全て融かせればよかったんだけど……さすがに彼の登場が早くて」


そういうと、無線からオールマイトの声がした。戻れとの指示だ。
外に出ようと各々足を進める。夜月もそれにならい足を進めようとするが、眩暈を起こし身体が揺れる。

前に倒れこみそうになると、轟が咄嗟に夜月の腹部に腕を回し、受け止めた。


「悪ぃ、すこし強く抑え過ぎたか?」

「あぁいや、ありがとう」


夜月は轟の腕をつかみながら体を起こす。
轟は心配そうに顔を覗き込むが、平気だと伝え歩き出した。

二日間連続で個性を使い過ぎている。
それに個性は学校に限らず、家でも便利でよく使ってしまっている。その反動がきた。

モニターを見る場所まで戻ると、切島が「こっちこっち」というように手招きをする。
夜月はそれに応え、切島のもとへ向かう。


「さっきは凄かったぜ! やっぱお前、かっけぇよ!」

「ありがとう。まぁ、負けたけどね」

「それでもスゲェって! あ、そういや頭打ってたけど大丈夫か?」


切島は夜月に手を伸ばすと、そのまま打ったであろう場所を優しく撫で始めた。
夜月もそれは予想外でピシリと固まってしまう。

切島は最初、そんな夜月を不思議そうに見ながら撫でたが、何を思ったのか勢いよく手を引いた。


「わ、悪い! 嫌だったか……?」

「い、いや! 頭を撫でられたこととか、あまりなくて……戸惑っただけだよ」


いつもはこんなことないが、唐突だったためか少し頬を赤らめてしまう。
切島もそんな夜月を見て、恥ずかしそうに頬を掻いた。


「そ、それにしても、君は優しいね。頭を打ったぐらいで」


すると切島は夜月の言葉が気に入らないのか、少しムっとした。
そして当たり前だというように強くいう。


「頭打ったんだぜ? そりゃあ心配するに決まってんだろ」


サラっと言った切島に、夜月は少しポカンとしてしまう。
それから嬉しそうに微笑んだ。


「君の方がかっこいいと思うけど」

「い、いきなりなんだよ!?」

「事実を言っただけよ。えぇ、かっこいいわ、切島」

「そ、そういうこと言うんじゃねぇ!! 照れるだろっ!?」

「ふふ、照れたの?」


夜月はクスクスと笑う。
それ以来、夜月は以前より切島と打ち解けるようになった。
戦闘訓練も着々と進み、今日訓練は終了となる。

取り敢えず、長い一日は終わった。