三二一年、三月末。
シンドゥラからペシャワール城塞に返ってくると、王太子アルスラーンの名で二つの布告が出された。
一つはルシタニア追放令、一つは奴隷制度禁止令。
奴隷制度禁止令は、アルスラーンが王となった時に発行されるものだ。
その後、王太子アルスラーンと王女スーリのもとに全てのパルス人は集結するようにと放たれた。
そして、花々が彩る日の四月。
ペシャワール城塞の門は、日没から日の出まで大きく開かれた。
集結の知らせを耳にした諸侯たちは、兵や馬を率いてペシャワール城塞に訪れた。馬や甲冑の音が響く。
ペシャワール城塞に訪れた諸侯たちは王太子と王女と対面すべく、謁見の間に足を運ぶ。
そこには椅子に腰を掛けたアルスラーンと、それに寄り添って立つスーリの姿があった。
最初、ダリューンやキシュワードがスーリも椅子に座るよう進言したが「私は王女であっても玉座に座る者ではない。王の代わりも、王となるのもただ一人、ならば玉座もひとつで十分」と言われ、押し黙ってしまった二人はそれに従うのみとなった。
「レイの城主、ルーシャンと申す。アルスラーン殿下の檄に応じ、馳せ参じました」
一人目の騎士が名乗りを上げる。
続けて他の騎士も名乗る。
「オクサスの領主ムンズィルの息子でザラーヴァントと申す者。
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