ゲー廃と秀徳高校バスケ部


「それじゃあこれでホームルーム終わり、号令」




この台詞を合図に「ありがとうございました」とそれぞれが元気よく挨拶をする。それから暫くしてゆっくり帰宅への準備を始める友人達を横に私は物凄い勢いで教室を出た。

そして走る。とにかく走る。

廊下は歩きなさい!とすれ違う教師達に怒鳴られるも知ったこっちゃない。ああ小学校でもよく言われたなあ反省はしてる、なんて思うだけである。思うだけましである。ごめんねでした。





さて100m走記録更新の勢い宜しく体育館へ滑り込む。そのまま流れるように部室からビブスを取り出し番号ごとに並べ、洗ってあったボトルに飲み物を足す。


おっと宮地先輩のスポーツドリンクがかなり溢れたけれどまあいいか、所詮宮地パイセンだし。


パイセンって響きなんかうけるんだよな、とお気楽呑気な思考に悩まされながらも部活の準備を5分足らずで終わらせた。


コートも下ろしたし床も雑だが磨いた。
予想以上に早く終わり部活までまだ30分もあるというハイスペックぶり。


「よし、早く終わらしたっつー事でゲームやりますか」

部室のベンチにゴロンと横になりカバンからPSPを取り出す。
昨日買ったばかりのソフトを無造作にツッコンでゲーム開始、そうそうこの至福の時間が堪らない。


いつも私は部活のマネージャー業務を早く終わらせ、部活前のこの隙間時間にゲームをする。
なんて最高なんだ、つか私今日5分で準備したって天才じゃね?とか今更思う。盛ったか8分は掛かったな。




「あ、名前またゲームやってんの?懲りねぇなあ。また宮地サンに怒られっぞ?」



ゲームの序盤めっさいいとこで誰か来た。
この声は某巨人駆逐できそうなんじゃないかランキング1位のHSKに違いない。



「お前来るの早すぎ、邪魔しないで〜」
「えっそこは意識高いね高尾ちゃんハートって褒めるとこだろ?」
「はいはい、意識高いねマカオちゃん」
「マカオじゃねえんだよなあ、うん」
「はいはいカカオちゃん」
「誰がカカオだ、おい」




俺に構おうよーやだよあの葉緑体に構ってもらえよー真ちゃんは委員会あるんだってばあーしらねぇーよマカオー
そんなくだらない会話をしながらゲームを進める。あっ、このプレイヤーかっこいいな推し認定。


「おい、どけゲー廃。着替えられねぇだろお前どっか出てけよ」


マカオが構ってくれなさにイジケて「もう和成しらないっ」と寸劇を交えながら部室を出たと思ったら入れ替わりで再び誰か来た。


「生憎アイドルオタクの脱衣シーンは興味無いんでお構いなく脱いで下さい」
「そういう問題じゃねぇ俺が気にするんだよ出てけよゲー廃。四六時中ゲー廃」
「否めねぇ」

頭をグオングオン掴まれて流石に爪がのめり込んで痛くなってきたので部室のドアノブに手をかける。

「そういえば宮地先輩って私のこと名前で呼んだこと無いですよね?」
「ゲー廃って呼んでるだろ?」
「それ早速名前じゃ無い」
「又の名をゲー廃だろ?」
「せめて、芸名ってことに、」
「お前芸ねぇだろ」
「否めねぇ」
「つか、早く出てけよ」


いい加減本当にウザい顔されたので部室を出る。
この野郎いつかパパイヤ投げつけてやる。あれパパイヤだっけ?ドリアンだっけ?いやパイナップルか。缶詰の方が投げたら痛そう。


がちゃりと部室のドアを捻る。
それじゃあまたあとで来ますね!もう来んな一生!おっとそんな事言っちゃって良かとばい?まじで早く出ろ名前。はい。




部室を追い出され行き場を無くした私はさてどこへ行こうか立ちゲーで良いか。
そんなこんなで本日何度目か分からない程には弄ったPSPの電源ボタンを押す。






そういえば、最後に先輩さり気なく名前で呼んでくれたような。



[ 1/3 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]