7,少し離れるだけで



「・・・確かに、字は読めるが何の意味がある資料かサッパリだな。」

薄暗い夜道をカカシに連れられ歩いて来た先は、なんだか社長室のように立派な部屋だった。町が一望出来る大きな窓の前には、大きな机。そこに大量の資料が乗っていて、その机の主はどっかりと貫禄たっぷりに椅子に座って私が渡した会社の資料をまじまじと見た。金色の髪に何歳なのかわからない顔立ち、私には存在しない大きな胸。やはり初めて見る服装にも驚いたがそれ以上に気になる部分はたくさんあった。

「その服装も見たことも無いが、動きにくそうな上に何も入らなそうだな。」

じろじろと上から下まで見ると彼女はそう言った。

「そのサンダルはー・・・カカシのか?」
「はは、そうです。こいつが履いてた靴はひとつしかこっちの世界に来なかったらしく。」
「・・・ふうん。そうか。」

カカシが敬語を使っていることから、やはり彼女はカカシより偉い人物なのだろう。カカシの返答に少し眉を顰めてもう一度私の事を不審そうに見た。

「よし、その服装じゃ目立つだろうしな。シズネ!着替えを貸してやれ。」
「はっ、はいぃ!」

シズネと呼ばれた豚を抱きかかえている女性は、素っ頓狂な声をあげると、私を手招きした。カカシもついてくるのかと思って彼の顔を見上げると、「着替えておいで。」と微笑まれた。

「では、行きましょうか。」

広い部屋を出ると、シズネさんはにこりと笑って言った。

「シ、シズネさんっ」
「はい!どうしました?」
「あの、さっきの人はなんなんですか?」
「綱手様の事ですか?」

シズネさんの後ろをついて歩きながら、さっきの女性について思い切って聞いてみた。

「つなでさま・・・?」
「はい。綱手様は木ノ葉隠れの里の五代目火影様です。医療忍術のスペシャリストで、とても素晴らしく、偉大な方なんですよ。」

シズネさんの返答に私は大きなハテナを浮かべた。木ノ葉隠れの里?火影様?医療忍術?どれも初めて聞く単語ばかりだったが、シズネさんは意気揚々と笑顔で答えてくれたあたり、常識的な事なのだろう。

「ふふっ。その顔は訳が分からないといった感じでしょうか?」
「えっ、あ、はい・・・。」
「簡単に言うと、木ノ葉隠れの里はこの国の事で、火影様というのは、この里で一番偉い人物です。カカシさんが忍だという事は聞きました?」
「あっ、はい!」
「綱手様も忍で、医療に関して特化している術のスペシャリストっていう事ですね。」
「へえ・・・」

シズネさんに説明を受けたが、やはりあまり納得はいかず、とりあえず私が迷い込んだ所は木ノ葉隠れの里という所で、ここで一番偉い人、綱手様には逆らわない方が良さそうだ。

「どうぞ!一応明日の着替えも。」

誰もいない会議室のような部屋に案内され、シズネさんから洋服を2着渡された。シズネさんが着ているものと同じような服だ。

「じゃあ、部屋の外で待っているので着替えたら出てきてくださいね。」

そう言うと、シズネさんは部屋から出て行った。
しんと静まり返った部屋はなんだか居心地が悪い。残された私は、早く出ようと早速洋服に着替え始めた。今、カカシは何をしているのだろう。私の事を、綱手様と話しているのだろうか。もしかして、今日はカカシの家に帰れないのだろうか。そう考えると、どんどんと気分が重くなっていった。
着替え終わり、ドアを開けると笑顔のシズネさんが「似合ってますね〜!」と褒めてくれた。


もう一度、綱手様の部屋までの道をシズネさんと歩いて行くと。その部屋の前に立つカカシの姿。話が終わったのだろう。彼の姿を見た途端、なんでだかとても安心した。

「お!すっかり木ノ葉の住人だ。」

私を見るなりおどけたようにカカシはそう言った。少し不安げにそんなカカシを見上げると、すっと右目を細めた。

「じゃあ、帰ろうか。」
「えっ」
「あれ?嫌?」
「あっ、ううん!ううん!帰ろう!」

カカシの言葉にひどく安心した。思わず声をあげてしまって慌てて否定する。そんな私にもう一度カカシは微笑みかけると、シズネさんに会釈をして家路へと足を進めた。私もシズネさんにお礼を言うとカカシの背中を追いかけた。
行きの道より帰りの道の方が時間がもだいぶ遅いはずなのに、怖いと全く思わなかった。それは、綺麗な月明かりのおかげなのか、それとも隣のカカシのおかげなのか。






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