3,きみの住んでる街



「本当に、どこから来たの?如月アイリちゃん?」

急に名前を呼ばれた私は、驚いて目を白黒させた。

「なんで!名前!?」
「あれ?違った?さっき見せてくれたカードにそう書いてあったんだけど。」
「あ、ああっ!そうです!正解!」
「俺は "はたけカカシ" ね。カカシでいいよ。」
「えっ、カカシ?」

初めて聞く名字に名前。違和感しかない。畑に案山子って。どんだけ農作業に適している名前なのだ。その驚きに思わず声をあげてしまったが、また不思議な顔をされてしまったので「なんでもない。」と口を閉じた。そうだ、ただの名前だ。とても特殊な。

「んー、俺が思うに、アイリはこの里のものじゃないよね。他里って可能性もなさそうだし・・・」

「持ってる物も分からない物ばかりだし」

「でも、言語だけは通じるんだよねえ。」

顎に手を当てつらつらとカカシは分析したことを述べていく。ぽかん、と口を開けて「はあ」「へえ」と間抜けな声でそれを受ける私。それを見て実に困った、というような顔をしたカカシは何かを思いついたように手招きをした。

「んー、あっ。ちょっとこっち来て。」
「?」

がらら、とベッドのすぐ横にある窓を開ける。
「見てみて」というカカシの言う通りにベッドに乗り、窓の外を見ると、

「うわあっ!!」

見た事の無い街の光景が広がっていた。日本のようなのに日本じゃない色とりどりの街並みに、思わず私は声をあげた。私の住んでいる、まるで色の無い街とは大違いだ。

「アイリの住む街とは違う?」
「全っ然違う!!この街の方がもの凄く綺麗で素敵!!」

興奮してはしゃぐ私に、カカシは少し驚いた顔をすると「へえ」と言ってすぐににっこりと笑った。




「っあ!やばい!」

ふたりでぼんやりと並んで外を眺めているとカカシは突然声をあげた。

「どうしたの?」
「今日集合9時だった!」
「集合?」

時計を見ると、もう短い針が11を指そうとしていた。カカシは素早く準備を始める。見た事の無い服装に、あれよあれよと隠れる顔。さっきまでスーツを馬鹿にしていた人の格好ではない。

「じゃあ、俺行くから。今日は外に出ない方が良い。食べ物は多少冷蔵庫に入ってる。俺が帰ってくるまで待ってて。」
「あ、はいっ」

あっという間に支度を終わらせたカカシは、早口でそう告げ、咄嗟に返事をした私の声を聞く前に風のように出かけて行ってしまった。

「その格好は何?」

閉じられた玄関にそう問うてみたが、やっぱり何も返ってこなかった。






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