08*今日のオススメは、、、 >>

「よしっ、アイリちゃんお疲れ!今日はもう帰って良いよ!」
「はい!お疲れさまでした!」

今日の仕事が全部終わった。結局カカシさんは私の休憩時間が過ぎても、ディナータイムになっても来なくて、もうすでに諦めた私は、カカシさんのことは考えないように、無心で働いた。きっといつも以上に元気だったと思う。全部の客席テーブルを拭き終わった頃、おやっさんに声を掛けられた。私は元気に返事をすると、帰り支度をするためにロッカーへ向かう。ふう、と一息つく。
カカシさんと出会って何日が経ったのだろう。初めは怖い忍さん。それから優しい忍さんに変わって、一緒にごはんを食べる人、いつも会いたくなる人になって、それから、今では大好きな人だ。こんなに印象が変わる人はいるのだろうか。もしかしたら、恋ってそういうものなのかな。カカシさんは、私の印象どう変わっていった?

「お疲れさまでしたーっ!」
「はい、おつかれー」

がららら

いつもはお客さんが鳴らす扉を、私が鳴らす。ここから家まで10分くらい。少し、肌寒いかな。もうすぐ春なのになあ。

「やっと出てきた。」
「え?」

ひんやりとした空気に肩をさすり、星がチラチラと光る空を見上げていると、目の前にある木の下から声が聞こえた。

「カカシさん、、、?」
「いつも昼に行くから何時に終わるのか知らなかったんだよねえ。」

ずっと探していた銀髪が風で揺れた。近付くと、暗くて分からなかった表情が見えて、カカシさんが笑っていると分かった。

「待ってたんですか?」
「んー、ちょっとね。」
「お店、入ってくれれば良かったのに、、、。」
「食べないのに入るのも迷惑でしょ?」
「め、迷惑なんて、!」

ふふ、と笑うとカカシさんは木に背中を預けた。
たくさんたくさん聞きたいことがあった。どうして病院で引き止めてまで私に店に行くって伝えたの?どうしてお昼に来なかったの?どうして、ずっと待ってたの?
全部の疑問は、カカシさんの顔を見た途端に吹き飛んだ。全部がチャラになるくらい、私はカカシさんに会いたかったみたいだ。

「お昼に、来ると思ってました。いつも通りに。」
「病み上がりに定食はキツイでしょ。それに、言わなかったっけ?」
「え?」

「退院したら店に迎えに行くって。」

頭にハテナが飛んだ。そんなことは断じて言われていない。
首をかしげる私を見て、カカシさんも首をかしげた。

「あれ、俺もしかして言ってない?」
「い、言われてないです、、、。」

カカシさんは頭をがしがし掻きながら、「あれ?言わなかったけ?俺緊張しすぎてたか?」とぶつぶつ言っていて、そんな姿が可愛らしくてなんだか笑いが込み上げてきた。

「あははっ」
「え、」

ついに笑ってしまった私に、驚いた顔をしたカカシさんだったが、すぐに笑顔になってふたりで一緒に笑った。

「見て。」

カカシさんがピッと上を指差した。

「わあ、」

自然と声が出た。カカシさんが差した上を見上げると、桃色の桜が私の視界には入りきらないほどたくさん綺麗に咲き誇っていた。真っ暗闇では分からなかった。お店の目の前にあるのに見もしなかった桜の木に今日やっと気付いた。

「今日満開らしいよ。で、これ。」

かさっ、と目の前に現れた袋。見覚えがある、甘味屋の袋。

「お団子!」
「アイリちゃんとお花見しようと思ってね。」

ふたりで、桜の木の下で座って食べた。よく聞くと、カカシさんは甘いものが嫌いらしくて。それなのに私のためにお団子を買ってきてくれたことにとても嬉しくなった。ちゃんと甘さ控えめなお団子だったのに気付いて、私と一緒に食べるためなのかなと自惚れてしまう。

「カカシさん」
「ん?」
「私、カカシさんとごはんを食べるのが一番楽しいです。」
「はは、なにそれ。」
「だから、ずっと前カカシさんに声を掛けてもらったの、感謝してるんです。ありがとうございます。」
「ああ、あれ、こちらこそ。俺的にナンパだったんだけどねえ。」
「えっ!」
「アイリちゃんには効いてなかったみたいね。」

びっくりしてお団子を落としそうになった。笑いながら話すカカシさんの顔を見ると、ぱちっと目が合った。

「あの時から、俺はアイリちゃんのことが好きだったよ。」

急に真剣な顔になったカカシさんに、言葉を失った。

「えっ、あっ、」

これが告白なんだと気付いた時には、私の顔は真っ赤に染まっていた。
返事をしなきゃと、口が急ぐ。

「わ、私は、最初、カカシさん、忍さんが怖くて、でも、カカシさんは違くて、優しくて、そしたら他の忍さんも怖くなくなって、それに、カカシさんとのごはんは楽しくて、いつもランチタイムが終わるのを待ってて、おやっさんカカシさん来た時にまかない出さないかなとか思ってたり、それで、いつもいつも、カカシさんに会えるのを、楽しみに、してて、」

たどたどしく思っていることを話す。自分でも言っている意味が分からなかった。それでもカカシさんはうんうん、と聞いてくれていた。

「それで、えっと、、、」
「それで?」

「わた、し、カカシさんのことが、すごく、好きです。」

言った瞬間に抱きしめられた。とても強く。そして、優しく。
桜の花びらがカカシさんの銀髪にふわりと乗った。


****


がらららら

「いらっしゃいませー!」
「まだランチやってる?」
「あっ、カカシさん!やってますよ!今日のオススメは、Aランチです!」
「じゃあ、それで。」
「おやっさん、Aランチひとつーっ!」
「あいよーっ!」

今日も、わいわいがやがや忙しいお昼時が過ぎた頃、いつも通りふらりとカカシさんがやってきた。いつも通りじゃないのは、

「おやっさーん、アイリちゃんにもまかないひとつー」
「え!ちょ、カカシさんっ!」
「あいよーっ!ラブラブ定食作っちゃうよーっ!」
「ちょ、おやっさん!!」

毎日、カカシさんとお昼ご飯を食べるようになったことくらいです。


おわり









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