07*今日のオススメはチキンカツ定食です。 >>

がらららら

「っ、いらっしゃいませー!」

扉の音が鳴る度に、あの銀髪を探した。違うと分かって落ち込んでしまう自分が恥ずかしかった。今日はカカシさんが退院する日だ。「店、行くから。」それだけ告げられ別れたあの時から、私の心臓はどきどきしっぱなしだった。昨夜はその言葉が頭から離れず眠れなかった。

「アイリちゃん!注文いいー?」
「あっ、はーい!」

お客さんにこの緊張がバレないように、ちゃんと元気に働かないと!

「今日、カカシ退院だってな。」
「ああ、すぐ任務だろうなあ。可哀想に。」

注文を取っていると、後ろに座っている忍さんの声が耳に入った。

"すぐ任務"

あれ、今日、お店に来てくれるはずじゃなかったっけ?いや、でも忍さんは大変だし、任務が急に入ったのかもしれないし、あの時はわからなかったのかもしれないし、連絡先とか知らないし、それに、それに、

「アイリちゃん?」
「えっ、あっ、な、なんでしょうか?」
「だから、俺、チキンカツ定食ね。」
「あ、はい!チキンカツ!ありがとうございます!」

お客さんに声をかけられハッとした私は、今まで考えていたことを全部吹き飛ばした。いや、吹き飛ばすことなんてできないのだけれど。

****

お昼時が過ぎた。
いつも通り、しん、と静まり返った店内に、いつもなら安心するのに、今日はなんだか寂しくて、とても心が苦しかった。

「じゃあ、アイリちゃん表の看板片してきて〜」
「はーい、、、」

明らかに元気のない私の返事におやっさんが心配そうな顔をした。もう、ランチタイム終わってしまったよ、カカシさん。表の看板を片して、辺りを見回しても、やっぱりカカシさんの姿は無くて、私はすごく悲しくなった。あんなに期待して、バカみたいだ。昨日眠れなかったなんて、なにやってるんだ。

ふうーっ、と長い溜息をついて、お店の中へ入る。

「アイリちゃん、今日のまかない天丼ね。」

優しい声のおやっさんから天丼を受け取り、席に着くと、涙がじわりと私の目を濡らした。目の前の天丼はこんなにも近いのに、全然見えなくなってしまった。よく考えたら、あんな言葉、ただの社交辞令だったんだ。私がただ期待しすぎてしまっただけで。

そうだ、いつも通り、なんだ。









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