05*今日のオススメは生姜焼き定食です。 >>

「アイリ ちゃん、表の看板片してきて〜」
「はーい!」

お店が一段落すると、夜の準備をするため一旦お店を閉める。そして、おやっさんが仕込みをする間、私は休憩。と、いうことは。

「よしっ!」

看板を片して、両手で頬をぱんっ、とはたいて気合いを入れる。嵐のように去ったカップルが置いて行った花束を見る。いいのだろうか、私が行っても。

「アイリちゃん!」
「はい!」
「カカシさんのお見舞いに行くんだろう?今日はうちの奥さんも手伝うって言うし、今日は戻らなくていいよ。」
「おやっさん、、、」
「な。行きなさい。」

おやっさんの笑顔が眩しい。おやっさんの優しさを無駄にしないようにちゃんとお見舞いしてこよう。カップルの優しさなのか、ふざけなのか分からないが、好意だと受け取ろう。大きな花束を抱えて、病院に向かった。

カカシさんと気まずいままも嫌だ。勝手に自分で気まずくなっただけだけれど、言えばスッキリするはずだ。ちゃんと謝って、ちゃんと寂しかったって言って、ちゃんと好きって、、、え?すき?

「え?」

声が出た。待て待て待て待て。え、好き?カカシさんは優しくて、笑顔が素敵で、毎日会えるのが楽しみで、カカシさんの「ランチまだやってる?」を毎日待ってて、毎日早くお昼時が終わらないかと思ってて、それって、これって、

「好きなのか?」

最大の疑問であり、答えが声となって出た。
気付くと目の前にはカカシさんが入院している病院。顔が、熱い。

****

がらら、と真っ白いドアを開ける。個室の窓際に、ぽつんとベッドがひとつ。

「、、、アイリちゃん?」
「、、、っあ、と、」

びっくりした。何も発してないのに。カカシさんは寝たきりなのに。何故分かったのだろう。

「、、、座りなよ。」

ずっと聞きたかった、柔らかくて優しい声。さっき出てしまった答えが頭の中を走った。顔が熱い。見てない、よね、顔。そっとカカシさんの近くへと進む。

「あの、これ、お花、、、」
「わ、ありがとねぇ。」

いつもより元気のない声だけれど、やっぱりカカシさんの声は優しい。花束をカカシさんのお腹の上にそっと置くと、ふわりと笑ってくれた。

「なんで入院してるんですか?」
「なんでお見舞い来たんですか?」

質問したら質問を返された。予想外の返答に、ふふ、と笑ってしまう。

「良かった。笑った。」
「え、」

よっこいしょ、とカカシさんが身体を起こす。普段と違う格好に、思わずどきり、としてしまった。

「最後に会った日、なんか元気なかったからさ。」
「そ、それは、」
「ダイエット、だっけ?」

ふふ、と笑うカカシさんは、食事の時にしか外さない口布も木ノ葉マークが刻まれている額当てもしていなくて、私はその綺麗な顔に見とれてしまった。
カカシさんは覚えていたのだ。あの日が会うのが最後だったということも。私が変だったということも。自分さえ忘れていたダイエット宣言をしたことも。

「だ、ダイエット、してないです」
「はは、だよね。アイリちゃんしなくて良いもん。」
「や、そんなことないですけど、、、」
「なんか、嫌なことあった?」

カカシさんは、真っ直ぐ私の目を見た。
どうしてこの人は、自分が心配される立場なのに、私のことを心配しているんだろう。

「ちが、くて、」

首を傾げるカカシさんに私は俯きながら口を開いた。

「カカシさん、てコピー忍者さんなんですよね、、、?それに、写輪眼の人で、木ノ葉一の業師で、」
「あー、あはは、誰かに聞いた?」
「わ、私、何も知らずに本人に、、、」

カカシさんの顔を見れずに勝手に気まずくなった要因を吐き出していく。ごめんなさい。と言いかけたところで、

「ぶふふっ」

カカシさんが吹き出した。

「ちょっと待ってっ、ごめ、あはは」
「え、カカシさ、」

私が顔を上げると、もうすでにカカシさんはお腹を抱えていて笑い声が止まらない。こんなに笑われるとは思わなかった私の顔はもうすでに真っ赤だ。

「そ、それっ、もしかして元気無かった原因?」
「、、、そうです、けど。」

恥ずかし過ぎて無くなりそうな声で答えると、またカカシさんの笑い声が飛んできた。
私を苦しめた要因を笑い飛ばすヤツを好きだなんて、どうかしていたかもしれないっっ!!









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