04*今日のオススメは唐揚げ定食です。 >>

「そういえば、最近カカシさん来ないねえ」

勝手に気まずくなって勝手に避けてしまったあの日から2週間が経った。気付いていたけど気付かないようにしていた言葉を、おやっさんはいとも簡単に言ってのけた。

「そうですね、、、。美味しい定食屋さんでも見つけたんですかね?」
「えっ!俺の飯食ったら他の食えないって言ってくれたのに!」

閉店後の店内におやっさんと私の笑い声が静かに響いた。カカシさんがいつも座る席がある。もちろん、カカシさん以外のお客さんが座ることもあるのだが、何故だか自分の中でカカシさんの席だと決めてしまう。カカシさんのあの柔らかい口調と、笑うと無くなる目を思い出す。

「、、、会いたいなあ」

ぽつり、と自然とこぼれた一言は、厨房で明日の仕込みをするおやっさんの冷蔵庫を閉める音にかき消された。

****

「あんたがアイリちゃん?」
「へっ?はあ、そうです、、、」

珍しくカップルのお客さんが来店したと思ったら突然飛んできた質問に咄嗟に答える。「良いの見つけたじゃないあいつ!」とキャッキャッとはしゃぐ黒髪に赤目のお姉さんと、髭を生やして煙草をふかすお兄さん。お兄さんのカカシさんと同じような格好にこの人達も忍さんだと分かる。

「ねえ!お店、何時に終わるの?」
「え!え、えーとー、お昼のお客さんが終わったら一旦休憩があって、それから、」
「そこで良いじゃない!ねえアスマ!」
「だな。」

私の言葉を最後まで聞く前にふたりの意見は合致したようで、"アスマ" と呼ばれたお兄さんは、煙草を一吹きすると、ばさっ、と私の目の前にあるものを突き出した。

「これ持ってカカシのとこ行ってくれないか?」

それは、紛れもなく色とりどりの綺麗な花束だった。

****

カカシさんの同僚だという紅さんとアスマさんは、今からカカシさんのお見舞いに行くところだったらしいが、いつものメンバーだとつまらないという理由で、カカシさんがちらっと口にした "定食屋の女の子" に行ってもらおうということだった。

と、いうか

「カカシさん入院してるんですか?!」
「まあ、よくあることだよ」
「そんなに気にしなくて良いわよ。休めば良くなるんだから。」
「は、はあ、、、」
「とりあえず、最近元気無かったからよお、あんたが行けば気分も変わるんじゃないか?」
「わ、わかりました、、、」

仲良く唐揚げ定食を平らげて行ったふたりを見送ると、残された花束を見て、私は溜息をひとつついた。
これからカカシさんに会うのかと思うと、何故だか緊張した。








人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -