番外編*君の笑顔が一番好き >>

「いらっしゃいませー!あっ、カカシさん!」

がららと昔ながらの扉を開ければ、いつでも元気で明るいアイリの姿。それに加えて、自分の名前を付け足して微笑まれてしまえば、カカシの頬も自然と緩んでしまう。

「今日は早いんですね!けどちょっと今満席で・・・」
「空くまで待つよ・・・って、え?」

可愛い笑顔のアイリの後ろには、いつもの威勢の良いおやっさん。の他に見知った顔が3人。

「あっれーー!!カカシ先生!!」

驚いた顔でこちらを向いたサスケとサクラに、騒がしい店内で一際大きな声で自分の名前を呼ぶナルト。今日は午前で任務が終わったから、早くアイリに会いに行こうと昼ご飯に誘ってくる3人を軽くあしらって定食屋に急いだというのに、まさかここで会うとは。(どうして俺より速いんだ。)

「なにしてんの3人で・・・」
「お昼ご飯よ!先生ったら食べないって言ってたのに!」

一緒に食べようと誘うサクラに、フンと鼻を鳴らして黙々ときっとアイリに勧められたのだろうさんま定食を口に運ぶサスケ。困った。この3人と食べるということは今日はアイリと食べられないということだ。

「あれ?3人はカカシさんと知り合いなの?」

にこりと笑顔を向けるアイリにナルトが勢い良く立ち上がった。

「知り合いっていうか!先生だってばよ!」
「せ、先生?」

ナルトはビシッと人差し指をカカシに突きつけ、大きな声で答えた。それに驚いたアイリは目を見開いてカカシを見る。

「カカシさん、先生だったんですか?」
「いや、まあ、そうだねぇ。」
「へえ!言ってくださいよ!忍さんで先生って素敵ですねっ」

眩しい笑顔がとても可愛いはずなのに、今はなんだかとても痛い。ひとつ深く溜息をつくと、カカシはナルトの隣に腰掛けた。

「アイリちゃん、今日のオススメを。」
「はいっ!おやっさん!さんま定食ひとつー!」
「あいよーっ!」

カカシの注文に大きな明るいアイリの声が店内に響き、おやっさんの声も後に続いた。
隣にはナルト、目の前にはサスケとサクラ。本当だったら目の前ではアイリがまかないを食べているはずなのに。

「よくこの定食屋来るの?」
「サスケがラーメン飽きた!って駄々こねる時に来るんだってばよ。」
「駄々なんてこねてねーよ!ラーメン食いすぎなんだよお前が!」

質問を投げかけるとギャーギャーとふたりの言い合いが始まり、カカシはやれやれと溜息をついた。昼時でどこも騒がしいはずなのに、このテーブルだけ特別騒がしいように思う。

「カカシ先生は?よく来るの?」
「ん?んーまあねえ。」

サクラの質問にちらりとアイリを見やれば、他のお客さんに話しかけられ楽しそうに仕事をしている。今日はあまりアイリとは話せなさそうだ。
そして、カカシに邪魔者と認定された当の3人は、突然訪れた "カカシのマスクの下を見る" という最重要任務に気付く。

「(もしかしてもしかして!これって絶好のチャンスなんじゃねーの?!)」
「(そうよね。さんま定食だって食べるのに時間がかかるし!)」
「(あとは邪魔が入るのを防ぐだけだな。)」

カカシがアイリを見ている隙に、小声で会議を繰り広げた3人はカカシのマスクを見て、ごくりと喉を鳴らした。

「お待ちどうさま!さんま定食です!」

とん、とカカシの目の前にほかほかな定食が置かれた。いただきますと手を合わせたカカシに3人の視線が集まる。

がらららら

「アイリちゃん!聞いたわよ!おめでとう!」
「ほらよ!今度はお前に花束だ!」
「おお!カカシもいるじゃないかあーーーっ!!」

勢い良く開いた扉から勢い良く入ってくる3人の上忍は、口々に祝福の言葉を投げかけた。そして、それによって隠れる "カカシの素顔" 。

「うるさいよ、3人共。お店に迷惑でしょ。」

そうカカシが3人を注意する頃にはいつものカカシに戻っていたのだ。もちろんさんま定食は完食されている。また任務失敗だ、とナルト達は深く大きな溜息をつくと、アスマに渡された大きな花束に埋もれる彼女を見た。

「何がおめでとうなんだってば?」

ナルトが問いかけると、花束から覗かせたアイリの顔がみるみると赤くなっていく。アイリがちらりとカカシを見ると、カカシはもう諦めたように微笑んだ。

「えっ、と・・・カ、カカシさんとお付き合いすることになったので・・・。」
「「「ええっ!!」」」

アイリの遠慮がちに発せられた声に店内にいたお客さん皆が驚きの声をあげた。残念がる声もちらほらと。目を輝かせるサクラに、興味無さそうにしながらも耳を大きくするサスケ、そしてカカシに質問攻めをするナルト。3人に囲まれ、カカシは困ったように濁しながらも答えるのだった。


****


「いやあ。ごめんね、うるさくて。」

お昼時が終わり、夜の仕込みをするからと騒ぐ6人を無理矢理返し、店内がやっと静かになったと一息ついたところ、カカシがそう口を開いた。アイリも他のお客さんに仕事にならないほど質問攻めをされ疲れ切っていた。

「いえいえ!あんなに大騒ぎになると思わなかったです。」

へらりと笑って椅子に座ると、カカシが向かいに座って頬杖をついた。その動作にふいにどきりとした。

「今日もアイリちゃんとご飯食べるつもりだったのにね。」
「あっ、そういえばお昼食べてないですね。」

意識をするとお腹が減ってきた。さっきまで別の意味で忙しくて気にもしていなかったのに。少しの沈黙にお腹が鳴りそうでぎゅっと力を込めた。

「ま、恋人宣言したわけだし。これで誰にも盗られないよね?」
「へっ!」

――――ぐううう〜

カカシの言葉に緩んだアイリのお腹から出た音は静かな店内には大きく響いた。アイリの顔がみるみる赤くなるのを見て、カカシは思わず吹き出した。

「あはは、ご飯食べようかあ。」
「は、はい・・・」

にこりと微笑んだカカシにさらにアイリは顔を赤くして微笑んだ。








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