「あ、いた!」
カカシせんせーっ!と叫ぶとなんとも言えない表情で振り返るカカシ先生。ああ、今日も昨日よりとってもとっても素敵ですっ!
「おはよう。朝から元気だねえ。」
「おはようございますっ!カカシ先生に朝から会えたので、今日も1日ハッピーです!」
溢れ出すにやけを笑顔に変えてそう言うと、「そんなこと言ってくれるのアイリちゃんだけだよ」と眉を下げながら微笑む先生。そして、私はそそくさとカカシ先生と肩を並べる。
「今から任務ですか?」
「いや、任務もらいに行くところ」
「わ、私もです!!」
よっしゃ、目的地まで一緒だ。心の中でガッツポーズをすると、上からふふふと笑い声が降ってきた。
「嬉しそうだねぇ」
あれ、ガッツポーズ外にまではみ出てたかな。
「カカシ先生は、今日もナルトくんたちと任務ですか?」
「うん、そうなるねぇ」
「そっかー、私もカカシ先生とマンセル組みたいなー」
ぴたっとカカシ先生が歩くのを止めた。二歩進んでしまったところで私も止まる。振り返ると、いつものカカシ先生。はあ、とひとつ溜息をつくと、
「アイリちゃん、ちょっと、寄り道しようか。」
いつもの、カカシ先生…?
****
どきどきというよりばくばくという擬音がぴったりな私の心臓は、おさまるどころか私の残りの人生分使い果たす勢いで働きまくっている。
私の右の手首をしっかりと握りながら歩くカカシ先生は、なんていうか、
こわい。
私は勇気を振り絞って足を止めた。
「カカシせんせ…っ!」
カカシ先生も足を止め、私を見下ろす。
私の心臓はまだ働き者だ。
「…いたい、で、す…。」
「え、あっ、ごめん。」
ぱっとカカシ先生が手を離した私の右手首は少し赤くなっていた。
「アイリちゃん、ちょっと座ろっか。」
カカシ先生が公園のベンチを指差す。
私は頷く前に口を開いた。
「なにか、怒りましたか?わ、たし、なにかしましたか?」
声が震えた。いつものカカシ先生と違うから。おさまってよ、私の心臓。
「ううん、なにもしてないよ。
あー、
うそ、したのか。」
あ、止まりそう。死んでしまうのか、私は。心臓が苦しい。ぎゅーって掴まれたみたいにすごくすごく苦しい。少し背中を丸めて私の目の高さに合わせて喋るカカシ先生の顔を見れずに私は俯きながら話す。
「な、に、したんでしょうか…ごめ、んなさい…嫌いに、なりましたか?」
どうしても、声が、震えるのだ。泣かない。泣いたらもっと嫌われてしまうかもしれない。頑張れ、私の目。
カカシ先生の右手が私の頭にぽん、と乗った。
「逆でしょ。」
私が顔を上げると、
いつもの、カカシ先生。
「そんなに毎日俺に会いに来て、反応しにくいことばっか言って、帰って、なんなのよ。」
「…え」
「好きに、なっちゃうでしょうが」
「え?」
ぽかんと口が開いた私を頭に乗った手がわしゃわしゃと掻き乱す。
「あほづら。」
口布を下げて近づいて来るカカシ先生はいつもと違って、一層素敵だ。
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