それは、予告を観てからずっと見たかったのだけれど、なんだかどうしても小っ恥ずかしくてイタチくんを誘えず、でも彼と観れないのなら友達と観ても仕方ないやと思って結局観なかった恋愛映画だった。ふらりと立ち寄ったレンタルビデオショップに、春だからなのか浮かれたポップと共に並べられた恋愛映画達に紛れて置かれていたそのDVDは、見るなりイタチくんを思い出した。手に取りジャケットを見る。やっぱり観たいな。女の子が誰しも憧れる、ロマンティックでドキドキの恋愛モノ。もし、イタチくんと観てたら恥ずかしすぎて観れなかったかもしれない。ひとりで堪能しよう。そう思って借りてきたDVD。だけど、今は隣にイタチくんがいる。まさか一緒に観れるなんて。大きなスクリーンじゃなくても、窮屈なソファでも、山盛りのポップコーンが無くても良いのだ。隣にイタチくんがいるなら。

「イタチくん!」
「どうした?」
「これ一緒に観ない?」

DVDをイタチくんに見せると、にこりと笑顔になった。

「映画か。久しく観ていないな。」
「れ、恋愛モノなんだけどねっ、ずっと観たくて、面白いらしくて」
「はは、分かったよ。観よう。」

イタチくんと観たくて、なんて恥ずかしすぎるからただただこの映画が観たかったんだということをアピールしたけど、全部見透かしたかのようにイタチくんは笑った。
DVDをプレイヤーに入れると、明るい音楽と共に主人公らしき女の子が登場した。有名な若い女優さん。可愛くて、メイクを真似した時もあったけど、やっぱり顔は真似出来ないとすぐにやめた。お話が進んでいくと、かっこいい男の子が登場して、主人公はベタにすとんと恋に落ちた。奮闘して翻弄されて、頑張る主人公に自分も心が揺さぶられた。男の子がやっと振り向いてくれた時、キスをした。思わず声が出そうになるくらいに、ロマンティックなキスだ。

「アイリ」
「ん?」

ふたり静かに観ていたので、イタチくんの声が随分と鮮明に聞こえた。くるりと振り向くと、顔が、近い。キスされる。そう思って、ギュッと目を瞑ると、ふふ、と笑い声が聞こえて、リップ音が鳴った。そろりと目を開けると、まだ近い顔。思わず照れてしまう。

「くち、開けて。」
「へ、」

囁かれたその言葉に、間抜けな声を出してしまった。その瞬間にまた唇が塞がれて、開いた隙間から舌が侵入してきた。どんどん深く落ちていく。

「アイリ、すきだよ。」

さっき、可愛い主人公が男の子に言われていた言葉。イタチくんが言う方が何倍もどきどきする。

「わ、私も好きだよ。」

主人公のあのセリフで答えると、イタチくんは綺麗に微笑んで、そっと私の首筋に顔を埋めた。




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