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千代のやりたい事


目を覚ますとそこは既に先程までいた固い地面の上ではなく、柔らかい布団の上に寝かされていた。先程までなにか幸せな夢を見ていた千代は、まだ頭が働かずに寝ぼけ眼で辺りを見回した。
布団の傍らにも部屋にも誰もいない。ただいつも自分を手助けしてくれる式神を呼び出すための紙が一枚枕元にあるのみだった。その紙を無意識に手に取ってから先程まで自分が何をしていたのかを思い出そうとする。

「たしか……、誰かと夜倉さんが戦ってて……そこにらーちゃんが割って入ってくれて……それで…………」

そこまで思い出して、四本腕の緑の髪をした妖怪の目を見た途端に意識を失ったこと、その人がもう一人の緑髪の妖怪を殺そうとしていた事、その人を守ろうとした事。色々な事が一気に千代の頭に流れていった。
同時に今自分が布団で寝ているということは、自分が庇っていた妖怪はどうなったのか。なんとなく察しがついてしまった。冷や汗が千代の背中に流れる。焦りすぎると過呼吸になるので深呼吸を一、二度繰り返して、なんとか心を落ち着かせた。

「っ、らーちゃん!」

それでもまだ不安定な状態なのは分かっていたが、じっと布団の上で回復するまで待っている、なんてことができる余裕は千代にはなく。手に持っていた紙を掲げて式神の名を叫んだ。幸いここは一階で窓もある部屋。窓の外に式神を呼び出して、その上に落ちるように跨がればすぐに外へと出れた。
式神は心配そうに唸りながら千代を見つめるが、千代の目を見て無駄だと分かったのかすぐに前を向いて走り出した。彼はどうなってしまったのか、確かめるために。

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