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爆発の惨事


時計が12時を指すのときっかり同時に、発砲音が部屋に響いた。
その瞬間、全員が出口に向かって一斉に走り出す。
音を聴かず時計で判断し出ていく者、音を聴いてから出ていく者。両者半々と言った所だった。
クロムはというと、そのどちらにも属さず十秒数えた後気だるそうに適当な駆け足で会場から出ていった。


二階ほど降りて、53階と52階を結ぶ階段場でふとクロムは足をとめた。
ここまで降りてきたが、皆我先にと進んでいったためか今のところクロムは誰とも会っていない。
そのため爆発させる機会がなく、最初は高まっていたテンションも今はいつもより低いぐらいまで下がっていた。
はぁ〜と重くため息をついて、ポケットの釘をいじる。

「やっぱあんなしょっぼい音なんかで気合い入らんなあ……。うーん、ここでやってもええかなー。でも敵もおらんしなー。いやでもやりたいし……。あー!どないしよ!」

うだうだと身ぶり手ぶり付きの独り言を言い終えて、クロムは目を思いっきり瞑り、眉間にシワを寄せ、腕組みをし、首を傾げ、いかにも迷っているというポーズをする。
その状態を一秒キープすることなくクロムは「よし!」と決断の声をあげた。
そしてポケットに入っていた少し大きめの釘を三つ、53階の方に力一杯放り投げーー

「爆発せぇっっ!!」

高らかに叫んだ。
すると放り投げられた釘は一斉に、ドドドン!とテンポのいい爆音と共に鮮やかに爆発。
それを見届ける前に、爆発によって発生した爆風を避けるため50階まで一気にかけ降りる。
かけ降りながらクロムは何にも代えられない喜びと高揚感で満たされ、テンションも最初の頃以上になっていた。


「やって良かったー!!」

あと二段目のところからジャンプで飛び降りながら、50階ともなるとまだ誰かが残っているかも知れないということも考えずクロムは気持ち悪いくらいの笑顔のまま全力で叫んだ。
しかし着地後すぐさま少し落ち込んだ表情に変わる。

「でもやっぱ見たかったなあ……。あんまええ金属使ってへんけどさー。あーあ、あんなすごい爆発やったのにな〜……。隠れる所ないねんもんなあ」

はーあぁとため息のような声を漏らしながら、クロムはそのままゆっくり49階へと続く階段を降りていく。
自分の起こした爆発で、上がどれだけ酷い有り様になっているかも想像せず。

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