小説 | ナノ


夜道には気を付けてお帰りください


学校からの帰り道、夕暮れも終わり、蛍光灯のみが照らす道をたんぽぽは歩く。
少し学校で話し込みすぎていて、いつもなら帰っている時間はもう過ぎていた。
リリーはちゃんと家に帰れたかな、などと考えたが、駿河先生が見張ってそうだし大丈夫か。と結論付ける。
僕も早く帰らないとなあ、といつもの道を早足で駆けようとした。
その前方に、虹色の髪をした青年が蛍光灯の下に突っ立っていた。
たんぽぽはその異様な髪色につい視線を向けてしまったが、あまりじろじろ見るのも失礼なのですぐに気にしていないふりをして目を逸らした。
こんなところで人と待ち合わせなのか、迷っているのか、たんぽぽは少し興味はあったがあまり関わりたいとは思えずそのまま通りすぎることにする。
すれ違いざま青年の顔を盗み見ると、たんぽぽと青年の視線がぶつかった。
慌ててたんぽぽは視線を前方に戻し、足を少し早める。
もとい、早めようとした。
足を早めようとしたその瞬間、左胸辺りが突然燃えるように熱くなり、足に力が入らなくなった。

「え……?」

何が起こったのか分からないまま、たんぽぽは倒れこむ。
不思議とその痛みも感じず、とにかく胸が熱いままで。
なんとか現状を把握しようと、視線を這わせる。
そして後方に視線を向けるとそこには、たった今すれ違った、虹色の髪の青年が立っていた。
多少視界は霞むものの、その目立つ髪色を見間違えるはずがない。

「な、ぐっ……!」

見覚えのない、今初めて顔を合わせた相手になぜナイフを刺されているのか。
たんぽぽは問いかけようと口を開いたが、出てきたのは言葉ではなく大量の血だった。
ゲホゴホと咳き込み、血だまりを作っていくたんぽぽを見て青年はにっこりと不気味なくらい口角をつり上げて微笑む。

「あぁ! これで俺は一生罪人だ!」

そして唐突に両手を広げ、人が来るかも知れないと言うのに大声で喜んだ。
「ざ、い……にん……?」
「そう! そうだよ! 俺はこれから一生君を殺したっていう罪を背負っていかなくちゃならないんだ! これってすっごくゾクゾクしない!?」

訳が分からない、頭がおかしいんじゃないのか。
そう思ったが、息をするので精一杯なたんぽぽは何も言えず、ただ相手を睨むことしかできなかった。

「あぁ、その目、すっごく俺を睨んでくれてる! 君の友達も俺のことそんな風に睨んでくれるのかなあ、君は愛されてるだろうから、きっとそうなんだろうね! 考えただけでもすっごくゾクゾクするよ!」

恍惚の表情で身をくねらせながら青年は言う。
その言葉と表情を見て、要するに自分はこいつの快楽のために殺されたのか!とたんぽぽは理解した。
悔しさに奥歯を音をさせて噛み締める。

「さて、そろそろ逃げないと、君の友達に殺される前に特高に捕まっちゃうかな」

一方唐突に恍惚の表情から一気に冷めた表情になった青年は、たんぽぽの背中から生えているナイフに足を乗せた。

「い゛っ……!」

かすかにナイフが沈み、たんぽぽは苦痛の声をあげる。
それを羨ましいなぁ、などと本気で言いながら青年はそのままナイフに全体重を乗せた。


虹色の髪の青年、和乱和久の足元には一人の少女が息絶えている。
和久は少女を見下ろしながらこれからの事を考えて、ゾクゾクと全身を駆け巡る快楽に目を細めて一人微笑んだ。
そして少女には目もくれず、異能であるテレポートを使ってその場から立ち去った。

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