こんなにも愛しくて、苦しい(羊月) | ナノ
まるで、浮いているような不思議な感覚。
目が覚めたら、自分のではない体温を感じた。
(あ…。そうだ。)
その体温の持ち主は、まだ夢の中だった。
赤い髪に、まるで女の子のように長いまつげ。
端正な顔立ち。
でも私を、やんわりと抱きしめる腕は、やっぱり男の人だった。
体格だって、細いようでいて、私なんかすっぽり覆ってしまうくらい大きい。
(一体、どこに食べたものが入っていくのかな。)
あの大食いは、見た目からは想像が付かない。
…ちょっと悔しい。
起こさないように、ベットから抜け出し
自分の服をかき集めて、身に付けた。
私は昨日、彼と初めて夜を過ごした。
確かに怖かった。でも、彼にならいいと思った。
目が覚めてから、なんだか大切なものを失くしたようでいて
もっと大切な何かを貰ったような、なんだか不安定な気持ちになっている。
確かめたくて、彼に目覚めて欲しいけど、
知りたくなくて、まだ眠っていて欲しかったり、
なんだかとっても不安定。
まだ、夢の中にいるような気がする。
…もしかしたらまだ夢の中なのかもしれない。
「…ん。つ、きこ?」
不意に彼に呼ばれた気がした。
(起きたのかな?)
振り返るが、起きてはいなさそうだった。
安心したような、残念なような…。
なんでかな、涙が出そう。
「愛してるよ、羊君。」
彼の頬にキスを落とした。
恋が愛に変わったら
こんなにも
愛しくて、苦しい
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