二夜の月を愛でる(07) | ナノ
まんまるお月さまが好きだった。欠けちゃってる月よりも、丸い方が可愛いし、よく見えるから。小さい頃は、"満月だぁ!"とか言って喜んでたっけ。いつからか、欠けた月にも愛着を感じて、実は完全な丸よりも好きになっている。実際に昔の人は、ほんのちょっと欠けた月の方が、風情があると、日記を描いた人もいた。…あれは阿仏尼だったっけ。


「何見てるんだ?」
「錫也。ちょっと、月を…ね。」

二人で同棲する時に、星が綺麗に見える所が住む場所の条件だった。その甲斐あって、一年中ベランダから綺麗な星と月が見える。だから、私はよくベランダで星を眺める。こうしていると、高校のあの楽しい生活が懐かしい。


「これ羽織って、風邪ひくから。」
「ありがとう。」
「…それで、どうしたんだ。何かあったんだろ?」
「…うん、ちょっと自己嫌悪中なの。」


自分のやれる範囲の事は、昔から少し無理してでもやりたかった。ただ全てを完璧にやるには、まだまだ力不足で。まんまるお月さまのような、完璧には程遠い。今日だって、無理をし過ぎて他の人にまで迷惑をかけてしまった。


「なぁ、月子。月だって、まんまるに見えて実はそうじゃないんだって。皆、完璧なんてないんだよ。」
「…うん。」
「月だって、ゆっくり満ちてくだろ?人間だって、少しずつで良いんじゃないか。」


「…そう、だね。もうちょっと頑張ってみる。」

「まぁ、俺としてはちょっと出来ない方が、してやることが出来て嬉しいけどな。」
「もう、錫也ってば。」


今日はちょうど十三夜。
何だか、"これからが頑張り時だ"と言われてる気がした。錫也と並んで月を見ながら、欠けてない月はだから愛着がわくのかな、と考えていた。