長い長い星の旅(梓月) | ナノ
宇宙は本当に広くて、まだまだ分からない事が山ほどある。その"未知なる世界"ということが探究心を刺激され、宇宙を夢見る。あの無数に輝く星の向こうには、何があるのか。
今日もまた、星が瞬く。正確には、爆発した光が何億年という時を越えて、現在に届いている。一体あの星は、どんな旅をしてここまで来たのだろうか。


「今日は、星がよく見えるね。」
「そうですね。雲が殆ど無いですし。」

先輩と背中合わせで夜空を見上げる。この学園の屋上は、都心から離れているからか星がよく見える。ここから星を見上げると、本当に触れるような感じさえする。それだけ星が近くに感じられた。


「…何だか、小さな事でくよくよしてるのが、ちっぽけな事に感じる。昔から星を見上げては、そう感じてたの。」
「昔から星が好きだったんですか?」
「うん。小さな頃から、星は私の支えだった。何も言わず瞬いている事が、時々安心したんだ。」



心臓が脈を打つ、それと同じように星が瞬く。それはまるで生きている様に。そこに温かさを感じる。ちょっとロマンチックすぎるけど、そんな事を言ったら先輩も笑った。僕たち人間が何に悩んでいたって、変わらず星は輝くから、ちっぽけに感じるのだ。


"気の遠くなるような星の旅に比べたら、僕らの生きてきた時間は全然短い"


その短い人生で、その旅をどこまで知ることが出来るのか。それにどれだけ必死になれるかで、輝けるかが決まるのかもしれない。



「私もいつか、輝ける星に近づけるかな?」
「なれますよ。…先輩だけじゃなく、僕だって。」
「ふふ、そうだね。」

背中合わせのまま、先輩と手を繋いだ。
僕の心臓が星と一緒に、瞬いた。


ながい、ながい、星の旅