こわいゆめ(錫月) | ナノ
気がついたら、私と錫也の二人しかいなくて、真っ暗な道を二人で歩いていた。二人離れないように、しっかり手を繋いで。どうして歩いているのか、二人きりなのか、全然わからない。気がついたら、歩いていたのだ。それでも錫也が"大丈夫"と言ってくれたから、不思議と怖くなかった。




「ねぇ、錫也。私たち何処へ行くの?」
「…さぁ。俺にもわからない。」




あれから、どれくらい歩いたんだろう。周りが暗いから、分からない。もしかしたらそんなに経ってないのかもしれない。それでも気分は、ずっと歩いてきた感じがする。
ふと、錫也が立ち止った。



「…ごめん、俺はここまでしか行けない。」
「え?どうしてっ、一緒に。」
「無理なんだよ。幼馴染の俺たちは、ここまでが限界なんだ。」



今まで感じていた、繋いでいた手が離れていく。それまでずっと一緒だったのに、もう錫也はいなかった。…もっと必死に繋ぎとめていれば。ううん、もっと二人で歩いていれば。…幼馴染としてじゃなくて、貴方が大切なんですって、伝えていれば。あぁ、私はどれだけ彼に頼っていたのだろう。



…涙が止まらない。周りは真っ暗。寂しい、淋しい。
失くして知ったのは、貴方がどれだけ大切か。

目を閉じた、涙があふれた。

目を開けた、…日差しが眩しかった。



手には温もり。
(…確か錫也とDVDを見てて…。)


「どうしたんだ、月子。そんなに感動したのか?」
「…良かった。」
「何が?…ほら、ティッシュで拭いて。」


呆れたように笑う貴方が、隣にいる。ちゃんと、隣に。
もう少し安心したくて、自分から抱きついた。

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