誰のものにもならないで。(錫月) | ナノ
「うめぇー、やっぱ錫也の弁当は最高だな。」
「Qui。この卵焼きも最高だよ。」



まるで競争するかのように、お弁当に食らいつく2人。
「2人とも、落ち着いて食べろよ。」
「…ふふ。錫也、お母さんみたい。」
「お前は、早く食べないとなくなるぞ。」



ほら、卵焼き。と渡すと嬉しそうに笑った。
俺はこの笑顔が好きで、お弁当を作っている。
もちろん、哉太や羊に作ってやるのも楽しい。



(ホントに2人はよく食べるなー…。)




「あ、こら、羊!それは俺んだ!!」
「何言ってるんだよ。これは僕のだ。」
「…えい。」


「「 あ。 」」


お弁当の中にあったウィンナーは、月子の口の中へ。
「ふふふ、これは私のタコさんウィンナーだもん。」



毎回そんなことをやっては、騒いでいる時間が好きだ。
俺はこの時間を何より大切にしたい。
ーそう何よりも…。






…時々、考える。
もし、月子に好きな人ができたら?
もし、この中の誰かが月子を攫って行ってしまったら?
この時間はこのまま続けられるのか?

(正直、月子に気がある奴なんて沢山いる。)
(…俺も含めて。)
伝える気はない。
この4人でいる時間が、月子にとって何より大切だと、
この関係が壊れることを恐れているのを知っているから。




だから、どうかお願いだ。









誰のものにもならないで。









この関係が壊れるのも、
月子が誰かに攫われるのも、
どっちも嫌なんだ。



fin.