あまりにも綺麗で残酷な涙(誉月) | ナノ
君の涙は、とても優しい。
だから、簡単に僕の中に染み込んで浸透する。
空になった僕をゆっくりと満たす、まるで両手で包み込むように。

だから僕は、君自身を抱きしめる。
君の涙が止まるまで、ただひたすら抱きしめるんだ。


「っ誉先輩、。」
「…うん。大丈夫だよ。」


君は、色んな人の悲しみや苦しみを全部一人で背負いこむ。
人はそれを“偽善”だとか“お節介”というけれど、それでも君は
他人のために涙を流す。自分のために泣いた所を、僕は見たことがない。



「大丈夫、僕がここにいる。君は安心して泣いていいんだ。」



僕の肩に君の涙が落ちて、染みる。
どうしてか、そこだけ暖かいのだ。きっとこれが君の優しさの温度。
この涙の温度を知っているのは、僕だけ。



君が誰かのために泣くのなら、僕は君のためにそれを受け止めよう。
きっとこれが僕の愛の形。そうやって僕は君の涙で、愛を満たす。
目の前で大切な人が泣いているのに、幸福感を得ている僕は歪んでいるのかもしれない。




「…寝ちゃったみたい、だね。」

そして今日も彼女は泣き疲れて、僕の腕の中で意識を手放す。
起こさないようにベットへ運んで、隣に入って君を抱きしめて眠る。
君の体温は、肩に落ちた涙と同じ気がした。




(…また君は他人を思って泣くんだね。)