素直になれる;utpr | ナノ
「あ、あの翔君!」

まるで一世一代の大勝負にでも出るかのように、目の前の春歌が俺を呼んだ。色んな意味でドキドキしたが、次に来た一言で完全にやられた。


「ぎ、ぎゅって、しても良いですか?」
「は?」


思わず訊き返すと、慌てて弁解を始める。
いやいや、全然嫌じゃないけど。むしろ大歓迎。



「…ほら、どーぞ。」
両手を広げて促すと、少しためらった後、思いっきり突撃された。

「うわっ!!」
反動でひっくり返りそうになるのを何とか堪えて、春歌の背中に腕をまわした。
今日の春歌は珍しく甘えたがりだ。最近はようやく、恋人らしく(ここ重要)甘えてくれるようになった。ここまで来るのに、随分と時間がかかった。


「あのね、…翔君が、足らなかったの。」

時間がかかった分、とんでもないものを投下してくるときがある。

(馬鹿、この状況であおんな。)

「俺は、足りねーよ。これじゃ。」

キョトンとした春歌に、苦笑いをして自分の帽子を被せて、キスをした。