x=?07 | ナノ
「ここ、間違ってる。」

錫也が私のノートに書いた数式を差して言った。トントンと彼の指が示したのは、xの値だった。通りでさっきから答えが出ないわけだ。

「本当だ!ありがと、錫也。」
「どういたしまして。」

にこっと微笑んで、錫也は自分の問題に視線を戻した。自分の勉強をしながら、よく私の間違えに気付けたなぁ、と感心する。
(さすが、オカン。)


「感心してないで、やり直し。もうすぐ試験なんだから。」
「はーい。」
「それと…。」

不自然に言葉が切れたので、錫也の方を見ると至近距離に錫也の顔があって、口にちゅっとキスされた。何が起きたのかすぐには理解できなくて、パチパチと瞬きをする。


「ペナルティとして、間違えるごとにキス一回な。」
「え、え?」
「ほーら、次の問題解いて。」

そして何事もなかったように、錫也は自分の問題に戻った。
私はそれどころじゃなくて、それから一問も解けなかった。
(…勉強どころじゃないよ!)