大嫌いな君を:utpr | ナノ
傷つけてやりたかった。

何も知らないような顔をして、土足で入り込んでくるコイツが心底嫌いだった。


「…それでも、私は砂月君を嫌いにはなれません。」

弱くて、すぐ泣くくせに。
俺の事、本当は恐くて震えているくせに。
それでも真直ぐ俺を見る。その瞳がどうしようもなく憎かった。


「…俺は、嫌いだ。」
「はい、それでも良いです。」

「私が、砂月君を勝手に好きなだけですから。」

お前の愛は、見返りも何も求めちゃいない。これが無償の愛。
そんな物を、求めていたなんて認めるのが嫌だった。俺だけに向けられる愛が、欲しいだなんて。

「…もう、しゃべんな。」

無理やり口づけるつもりが、どこかいつもより優しくなってしまった事に、内心舌打ちした。あぁ、俺も那月と同じようにコイツが欲しいのか。

足元から崩れ落ちたのを見下ろす。少し水を含んだ目で、それでも真直ぐ俺を見ていた。

「…お願いだから、嫌いになってくれっ。」

言葉とは裏腹にそっと伸びてきた手を掴んで、きつく抱きしめた。
(もう、俺に拒否することは出来ないのだから。)