それでも世界は回ってる:utpr | ナノ
花弁がひらひらと舞っていて、君が涙ぐみながら笑って。
こんなに素敵な光景なのに、心から祝福するには、まだちょっと吹っ切れていない。


今日、七海は『一之瀬』になった。

あのとき、もっと勇気があったら隣にいたのは俺だったのかな。
…いや、どちらにしても七海はトキヤを選んでいたと思う。だって目の前の彼女は、あんなにも幸せそうだ。

純白の衣装を纏った彼女は、あまりにも眩しい。
今の俺には、到底直視なんて出来なかった。


「…音也くん!」

それなのに、君は僕の所へ来るんだね。トキヤと一緒に。

「七海、あ、もう一之瀬か。」
「ふふ、はい。お仕事はそのままですが。」

「…しあわせ?」
「はい、とっても。」

もう長い事つき合いがあるが、彼女のその顔が今までで一番、綺麗で美しかった。
…ずるいな、そんな顔。

「トキヤ。」
「何です?」
「…泣かせたら、俺が奪っちゃうからね。」
「…。そんなこと、させませんよ。」

“幸せにします、絶対”と言ったトキヤの顔も、今までにない位真剣だった。


「…2人とも、結婚おめでとう。」
(あ、七海泣いちゃった。)

「花嫁を泣かすとは、いい度胸ですね。」
「え、あ、あの!ちが、違うんです!」
「ははっ。あ、ほらブーケトスだって、花嫁さん。」


“い、いきます!”
そう言って七海が投げたブーケは、青空を弧を描いて飛んだ。何だか心のつっかえが、取れた。スッキリしていた。

そのブーケは結局、渋谷を越えて、那月が取った。

「ちょっと!そこは、私でしょ!」

皆が笑っている。俺も心から笑えた。