朝食はハニー07 | ナノ
瞼をゆっくりと開ける。まだ覚醒しきれていない頭で、ぼーっと天井を見つめた。すぐ近くで聞こえる寝息に、ふと違和感を覚えた。

(…あれ?まだ寝てる。)

緩慢な動作で寝がえりを打つと、隣にはいつも朝早い錫也が眠っていた。いつもなら私よりも先に起きて、朝食を(時にはお弁当も)作るという主婦さながらの生活の錫也が、まだ寝てる。私が先に起きた事なんて、あっただろうか?もしかしたら初めてかもしれない。こんな貴重な機会またとない。


すっかり目の覚めた私は、この状況を堪能することにした。
寝ている錫也をマジマジと見れる機会は、あまりない。よくよく考えると、彼は私の寝顔をもう何度も見ているのだから、不公平だろう。

色素の薄い髪が、顔にかかって良く見えない。そっと指で避けた。そのさらさらの手触りに、何だかムッとした。しっかりと閉じている瞼と縁どる睫の長さ、それにも何だか腹が立つ。


(本当に、女の私より綺麗なんだもん…。)

「…うりゃ。」
その白い鼻をつまんでやった。ちょっと苦しそうに顔を歪める。

「…どうせだったら、キスの方が良かったな。」
「!!」
苦笑いをして“おはよう”とキスをされた。
…やっぱり、錫也は一枚上手だ。悔しいなぁ。

「今日、朝ゆっくりだったよな。蜂蜜たっぷりのパンケーキ作るよ。」
「…うん。」

食べ物で機嫌良くなっちゃう、私も私だけど。