睫毛の落ちる音01 | ナノ
授業中彼女を盗み見る。本当はずっと見ていたいけど、以前怒られたので気がつかれないように見る。必死にノートを取ったり考えたり、懸命に授業を受けている。この学校の生徒は、皆星が好きだからか、授業を真面目に受けている子が多い。


(…まぁ、哉太はいつも寝てるけど。)


天文力学は物理と似ている。やたら難しい公式や、長い先生の話。確か彼女もこの授業が苦手だと言っていた気がする。少し面白味に欠けるとは、思う。嫌いではないけどね。


(あ、…ふふ。)


気がつけば、彼女の頭がゆらゆら揺れている。瞼も今にも落ちそうで、見るからに眠たそうだ。それでも必死に起きようと目を開けようとする姿が、すっごく可愛い。


(今、カクンってなった。)


頭が傾いて、寝てしまいそうになった。またカクンと動いて、恥ずかしそうに周りを見た。僕が見ていたのに気付かず、ホッと息をついた。思わず笑いそうになったのを、必死で堪えた。そして、とうとう伏せてしまった。どうやら眠る事を選んだようだ。

腕を枕にして、伏せた顔が少しこちらを向いた。


トロンとした瞳が、だんだん閉じていって
睫毛の落ちる音がした。

(あーぁ、寝ちゃった。起こすの大変だ。)

一度寝るとなかなか起きない彼女を見て苦笑いをしつつ、僕は授業に戻った。